<全国高校野球選手権:前橋育英7-1横浜>◇18日◇3回戦

 世代NO・1は譲らない。前橋育英(群馬)の高橋光成投手(2年)が、「2年生軍団」の横浜(神奈川)打線を1点に抑え、快勝で8強に進出した。2試合連続の1-0完封に続き、9回1失点完投(自責0)で防御率0・00を継続した。

 高橋光の目の前には、パソコン画面で“検索”した人が立っていた。8回1死一塁、初戦で特大本塁打を放った同学年のスター候補、横浜の4番高浜を迎えた。二盗、三盗で1死三塁とピンチを広げたが、目の前の打者に集中。2ボール1ストライクから、この日最速143キロの高め直球で、遊飛に打ち取った。

 「相手は2年生が中心。来年も戦わなくていけない。その前に1度倒しておきたいです」。試合開始の1時間半前、三塁側の室内練習場で静かに語った言葉を現実にした。大会開幕前までは、知名度は明らかに高浜が上だった。「(桐光学園)松井さんからホームランを打って、すごいなと思いました」と、パソコンで映像や記事を検索した。その4番を無安打に抑え、聖地で立場を逆転させた。

 横浜は、荒井直樹監督(49)が高校時代から通算8度対戦し、8連敗していた。試合前夜ミーティングで指揮官が冗談交じりに告白した。「9度目の正直って言葉あるよな。3の倍数だし」。それが高橋光の力になった。最速148キロの直球は、この日143キロ。三振は5個止まりだった。連戦で疲れがたまり、140キロ台は126球中、わずか7球。それでも要所でスライダー、フォークを低めに沈め、自責点0を継続した。

 世代NO・1に名乗りを上げた夏。初戦の前日、幼い頃からキャッチボールを続けてきた父義行さん(41)にメールを送った。「いよいよです。明日から頑張ります。今まで親父(おやじ)から教えてもらったすべてを出して、完封とかしちゃうね。今までありがとう。これからもよろしく」。

 毎試合完封を目指すからこそ、今大会初失点を悔やんだ。失策絡みだが、「1点取られたことが悔しい」と感情を表した。夏バテ気味の体。試合前日はサウナに通い、疲れを取ろうと試みた。80度の高温に「暑すぎて5分も入ってられませんでした」と笑った。難敵を乗り越えたニュースター候補の勢いが、ますます増してきた。【前田祐輔】

 ◆高橋光成(たかはし・こうな)1997年(平9)2月3日生まれ。群馬県沼田市出身。小学1年から利根ジュニアで野球を始める。中学から投手に専念し利根中で市ベスト4。「こうな」の由来は、祖父光政さんの「光」と「な」と読める漢字を入れたいという母尋美さんの願いから。尋美さんは「菜や奈は女の子っぽい。成という字は男の子っぽいので」と話す。小学校時代には毎晩牛乳を1リットル飲んだ。50メートル走6秒0。遠投90メートル。家族は両親と姉、弟。188センチ、82キロ。右投げ右打ち。血液型B。