<高校野球北北海道大会:岩見沢東2-0士別翔雲>◇19日◇1回戦◇旭川スタルヒン

 岩見沢東の伊藤宏太投手(3年)が士別翔雲を相手に完封した。

 「0」が並んだスコアボードを背に岩見沢東の伊藤は右拳を2度、3度振った。士別翔雲を散発4安打の完封。空知地区から続く無失点を3試合27イニングに伸ばした。旭川スタルヒンの球速表示は1球だけ139キロをマークしたが、ほとんどは130キロ前半。それでも安打は4本とも単打、しかも球数を93球に抑えた。テンポよく投げ込み、三塁を踏ませない完ぺきな投球だった。

 走者を出した後のピッチングに味があった。「今日は球のキレがいつもよりはなくて、長沢(捕手)のミットをめがけ、低めに丁寧に投げました」。90キロ台の緩い変化球を交え、内角にズバっと速球で攻めた。勝負どころでは気迫を込め、打ち取った。臼井隆史監督(45)は「内角攻めの指示を出したらそれを実行できるところがすごい」と、あらためて伊藤の秘める能力に驚いた。

 岩見沢東OBで74年都市対抗野球の最高殊勲選手賞にあたる橋戸賞に輝いた柳俊之さん(日本野球連盟理事)が、頼もしい後輩の伊藤に春過ぎから助言している。偉大な先輩の投手心得は<1>欲を出せ<2>練習では努力する<3>試合では手抜きもよし。この言葉を受け、伊藤は<1>甲子園を目標に<2>1日40分間走り込み<3>打たせて取る投球を心がける、と具体的に解釈。実際にこの試合は各回10球以下に終え、心得を実行した。柳さんは「伸びしろがいっぱいある。まだ2、3割しか使ってないでしょう。素直だしハートもいい」と期待した。

 チームは3年ぶりのベスト8。1923年創部の伝統校だが、南空知地区時代を含め、夏の南北大会はベスト8が最高だ。伊藤は「次もバックを信じて投げたい」と力を込めた。無失点記録の先に甲子園がある。【中尾猛】