<高校野球南北海道大会:小樽潮陵10-9浦河>◇22日◇準決勝◇札幌円山

 ミラクル潮陵だ!

 南北海道は小樽潮陵が逆転サヨナラで浦河を下し、創部111年目で初の決勝進出を果たした。9回表に4点差を勝ち越され、その裏も2死走者なしと崖っぷちに追い込まれたが、2番奈良、3番原田の連打で一、二塁とし、最後は4番の五十嵐玄大捕手(3年)が中越え二塁打を放ち、試合をひっくり返した。

 奇跡の逆転劇は崖っぷちで始まった。9回裏2死走者なし。2番奈良が右前打で出塁し、3番のエース原田が中前打で続く。長打で逆転の場面にここまで3安打の五十嵐に打順が回ってきた。「2人がつないでくれたのでどうにかしたかった」。ユニホームの胸を握って、心を落ち着かせると、初球の高め直球をバットの芯で捉えた。「抜けてくれ!」。打球は中堅手の頭上を越えた。

 奈良がホームを駆け抜け同点、そして原田がヘッドスライディングで滑り込んだ。劇的なサヨナラ勝利にベンチからナインが爆発したようにグラウンドに飛び出した。二塁を回っていた五十嵐は、目頭を押さえながら整列した。お立ち台の簾内義隆監督(44)は「ありがとうと言いたい」と声を震わせた。

 「打」への自信が逆転を呼んだ。88年に同監督とともに札幌開成で甲子園に出場し、筑波大で野球選手の動きを研究する川村卓准教授の講演を、昨秋に全員で聴いた。オフの間、棒にぶら下がって内股に挟んだボールを落とさず体をひねるトレーニングなどを導入した。

 元プロ野球選手の工藤公康氏、仁志敏久氏らに生体力学を指導する准教授の理論で、打撃に必要な筋肉を鍛えた。その成果が表れ、南大会では3試合連続2ケタ安打。この試合3打数2安打4打点と活躍した石田主将は「安定して打てるようになりました」と手応えを感じている。

 同監督がいた26年前の札幌開成は公立校ながら快進撃を続け、「ミラクル開成」と呼ばれた。毎朝カツを食べて負けなしだった当時を重ね、この夏もカツを食べて球場に入る。「今年のチームの方が、打力は上」と同監督が言えば「100%以上の力を出して勝ちたい」と五十嵐。今度は小樽潮陵が公立旋風を巻き起こす。【中島洋尚】

 ◆公立校の決勝進出

 南北海道で07年函館工(準優勝)以来、小樽潮陵が7年ぶり。優勝は00年札幌南が最新。