<高校野球栃木大会:作新学院7-1佐野日大>◇27日◇決勝◇宇都宮清原

 作新学院がセンバツ4強の佐野日大に逆転勝ちし、初の夏4連覇を飾った。初回に1点を先制されたが、6回に1-1の同点に追いつくと、さらに田中巧馬内野手(3年)が左中間スタンドに飛び込む勝ち越しの特大2ラン。ケガから復活した4番の一振りで、一気に試合の流れを呼び込んだ。春に続いて佐野日大を撃破し、4年連続10回目の夏甲子園をつかんだ。

 豪快にフルスイングした。作新学院は6回、1ー1の同点に追いつき、なおも1死二塁。田中が高めのカーブを振り抜くと、快音を残した打球は一直線に左中間スタンド中段の芝生で弾んだ。打球の行方を確認すると、右腕を高々と天に突き上げた。背番号「18」の主砲は「自分の1発でチームが流れに乗れてよかった」と喜んだ。公式戦初アーチが甲子園を引き寄せる貴重な1発。この後打線がつながり、6回さらに1点、7回には3点を追加した。小針崇宏監督(31)も「気持ちで打ちましたね」と目を細めた。

 ケガからはい上がった。田中が全体練習に復帰したのは大会3週間前。春の県大会、準々決勝の佐野日大戦で右手首に死球を受け、骨にひびが入った。右手にはギプスが巻かれ、投げることも、両手で打つこともできなくなった。母博子さん(40)は「家族は全員落ち込んだ」と振り返った。だが本人は周囲の心配をよそに、「夏には絶対、間に合わせる」と信じて焦らなかった。左手1本でティー打撃を毎日続けた。その結果、「左手の力がついて、変化球にも崩されなくなった」。この日の1発も、カーブをうまく引きつけた。まさにケガの功名だった。

 OBも一体となっての勝利だった。ドラフト上位候補の左腕、佐野日大のエース田嶋大樹(3年)を打たなければ4連覇はない。田嶋攻略のため、この日朝の打撃練習では、2年前に背番号10で甲子園で登板した筒井茂さんと、3番篠原優太さん(ともに国際武道大2年)の両左投げ2人が、マウンド1メートル手前から200球以上を全力投球した。思いが実り、球威の落ちた田嶋から同点にして、マウンドからも降ろした。スタンドで観戦した筒井さんは「願いがかなった。本当にうれしかった」と喜んだ。

 甲子園では昨夏の雪辱も果たしに行く。田中は3回戦の日大山形戦に代打で出場したが、三振に倒れて最後の打者になった。大泣きしながら、小針監督からこう言われた。「この悔しさを来年の夏にぶつけろ」。この言葉を胸に練習を重ねた。甲子園では「チームの勝ちに貢献できる一打を打ちたい」と、今年はうれし涙の夏にする。【上田悠太】

 ◆作新学院

 1885年(明18)創立の私立校。生徒数は3668人。野球部は1902年創部で部員数は117人。主なOBは元巨人江川卓、ロッテ岡田幸文。甲子園出場は春9度、夏は4年連続10度目。所在地は宇都宮市一の沢1の1の41。田村利夫校長。◆Vへの足跡◆1回戦16-0日光明峰・那須・那須高原海城2回戦10-0小山南3回戦7-4上三川準々決勝5-4青藍泰斗準決勝5-0大田原決勝7-1佐野日大