<全国高校野球選手権:春日部共栄5-1龍谷大平安>◇11日◇1回戦

 春日部共栄(埼玉)が、開幕戦で今春センバツ王者の龍谷大平安(京都)を破る金星を挙げた。1回に3番守屋元気捕手(3年)の先制犠飛など、打者10人の猛攻で5点を奪い、勝利した。エース左腕の金子大地投手(3年)は1失点完投。本多利治監督(56)は甲子園通算10勝目で、埼玉県勢春夏通算100勝のメモリアル勝利。センバツ優勝校が、夏の開幕戦で敗れるのは75年ぶり2度目の波乱となった。

 してやったり!

 の開幕速攻で春夏連覇を阻止した。春日部共栄は1回表、1番清水頌太遊撃手(2年)が強振の左前安打で出塁すると、その後7番長岡大智中堅手(3年)の2点適時二塁打など、一挙5安打集中で5点を挙げた。「球が浮いている」。打者が次打席でアドバイスし合い、軽快な金属音を響かせ続けた。龍谷大平安の先発左腕・元氏玲仁投手(2年)をわずか27球でKOした。

 じゃんけんが鍵だった。本多監督は「春夏連覇を意識するなら、初回に硬さが出る。相手が開幕戦に慣れる前にたたきたい」との意図で先攻を熱望。県大会でじゃんけん4勝3敗の小林慎太郎主将(3年)は期待通りにグーで勝った。ところが普段のクセで後攻を選んでしまい、「やっぱり先攻でっ!!」と慌てて訂正。ヒヤリの舞台裏も、1回表16分間の猛攻後では笑い話だ。

 開幕戦2日延期もなんのその。むしろ2日間、室内練習場で左腕投手を打ち込んだ成果が出た。右膝を痛めていた3番守屋も「おかげで治りました」。先制の犠飛は高めボール球をパワフルに外野深くへ運んだ。「来た球を思い切り打つだけでした」と、試合後も興奮で顔が紅潮していた。

 春王者を沈めた力の源はおにぎりだ。肉体強化のため、ナインは練習中に5個以上食べる。三宅麻未マネジャー(3年)は2年間で約2万個を握り、「もうおにぎりは見るのもイヤ!」と笑うほど。その苦労が選手の体重を軒並み5キロ前後増やし、投手陣の球威増と打線の強打連発につなげた。指揮官も「すべておにぎりのおかげですよ、本当に」としみじみ感謝した。

 清水らバックも好守で先発金子を援護し、本多監督に甲子園通算10勝目を届けた。埼玉勢の春夏通算100勝目も重なり「うれしい。歴史に名前が残るかな」と笑った。2日延期のドタバタも、試合には甲子園の魔物は現れず。「この試合、うちに女神がいましたね」。勝利の女神に見守られる春日部共栄に、快進撃の予感が漂う。【金子真仁】

 ◆埼玉県勢が春夏100勝

 春日部共栄が勝ち、埼玉県勢は春夏通算甲子園100勝目(春43勝、夏57勝)。全国21番目の到達(最多は大阪府の340勝)。埼玉で勝利が多い3傑は(1)浦和学院27(2)春日部共栄10(3)大宮8。

 ◆埼玉は平安キラー

 埼玉県勢は春夏通算100勝のうち、龍谷大平安から7勝目。通算10度目の対決で7勝3敗とした。