<高校野球奈良大会>◇28日◇決勝

 天理が圧倒的な猛打でライバル智弁学園を14-1で蹴散らし、2年連続25度目の甲子園を決めた。先発全員の17安打で14得点。守っても準決勝で完封したエース沼田優雅投手(3年)が1失点完投と投打がかみ合った。部員の不祥事で謹慎していた森川芳夫監督(54)が今春の選抜大会まで半年以上も不在という難局を乗り越え、ナインは最後の夏に大きな花を咲かせた。

 閉会式を待つ間、主将の安田絋規内野手(3年)と森川監督が握手を交わした。安田は「ありがとうございます、と。戻ってきてくれて僕らの力を上げてくれました」と感謝し、監督は「選手は待っていてくれた。その気持ちがうれしかった」と喜んだ。

 新チーム結成以来、苦しんできた思いのすべてをライバルとの一戦にぶつけた。初回から圧倒した。2死からチャンスをつくり内野聡内野手(3年)の二塁打で2点先制。計4得点で主導権を握った。左腕沼田は8回に1失点するまで飛ばし、打線も終盤に内野のソロ弾などで援護した。

 昨年9月に野球部員の不祥事が発覚し、監督と森田国夫部長(59)が無期限謹慎処分を受けた。代理監督の田中教生コーチ(31)のもとで戦ったセンバツは初戦で敦賀気比に完敗した。

 「一から出直そう」。センバツ後の3月23日に復帰した森川監督はそう言った。まず、大幅なコンバートに着手。中堅の中村奨吾(3年)を三塁に回すなど、二遊間と捕手以外は動かした。監督は「フレッシュで攻撃的なチームができた。細かいことはせず、あとは選手に任せています」と選手に信頼を寄せる。

 監督不在の難局は選手の自主性を育てていた。ミーティングは選手だけで行い、練習メニューも選手間で話し合って改良を加えた。練習中に問題を指摘し合うようにもなった。

 県内では昨夏から21連勝。ただ甲子園では近年、目立った成績を残せていない。謹慎明けから副部長になった森田前部長は来春に定年のため、今回が最後の夏。まだ負けられない。安田主将は「借りがある。目標は優勝です」。苦難の末に充実のときを迎えた強豪が自信をたずさえて甲子園に乗り込む。【柏原誠】