エンゼルス大谷翔平投手(26)、レイズ筒香嘉智外野手(28)、レッズ秋山翔吾外野手(32)と、日本人打者が苦戦している。その原因は一概には語れないが、メジャーの投手のレベルが今季また一段と上がっているのは感じるところだ。速球は回転数が増え、変化球は高速化し、ゾーンの使い方はよりワイドになった。

球の回転数はMLBが公式データ解析システム「スタットキャスト」を導入した15年から注目される指標のひとつになり、目新しいものではないが、今季は直球の回転数アップがトレンドといわれている。例えばレッズには高回転のフォーシームを投げる投手が多く、中でも先発右腕トレバー・バウアー(29)は昨季と比べて回転数が劇的に上がり両リーグ1位の約2800RPM(1分間あたりの回転数)。メジャートップのフォーシーム回転数が2600台だった4~5年前と比較すると、その増加は著しい。今季は期待の若手投手のデビューが多いが、若手にも回転数の多い速球を投げる投手は多い。

変化球の高速化も、若手投手を中心としてよく見られる。今季デビューしたマーリンズの先発右腕シクスト・サンチェス(22)はチェンジアップの平均球速が91マイル(約146キロ)。2年目のドジャース先発右腕ダスティン・メイ(22)は、カットボールの平均球速が94マイル(約151キロ)、チェンジアップも平均91マイル(約146キロ)。パドレスでやはり今季成長を遂げている先発右腕ディネルソン・ラメット(28)は、スライダーの球速が昨季と比べて2キロ以上上がり平均87マイル(約140キロ)をマークしている。

ゾーンに関しては、高めの使い方の変化と、変化球の落差の広がりがみられる。例えば前田健太投手(32)を筆頭に投手陣が安定しているツインズは、MLB公式サイトによると、ストライクゾーンの上部3分の1より上にスライダーを投げる割合がメジャートップで、昨季と比べ倍増。インディアンスでエースへと成長してきた右腕シェーン・ビーバー(25)は、ナックルカーブの落差が昨季の平均11センチから、今季は18センチにまで広がっている。これは今季メジャー全投手のカーブの中で、2番目に大きい昨季比の落差拡大だという。

このビーバーのナックルカーブを研究し自身のスライダーに生かしたというカブスのダルビッシュ有投手(34)も、今季は支配的な投球を続け、早くもサイ・ヤング賞候補に名が上がっている。今やどの球団も球のデータを測定できる機器を所有し、投球練習をしながらすぐに数値を確認できる時代。探求心旺盛な投手は果てしなくレベルアップしていくのかもしれない。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)