東京オリンピック(五輪)がどうなるのか、国内では悲観的な声も多いが、米国では間もなく野球の米大陸五輪予選が開催される。その予選に、かつてメジャーのスターだった有名選手が続々と参戦を表明しており、豪華な顔ぶれが見られそうだ。

元エンゼルスのマイク・ソーシア監督(62)率いる米国代表では、ヤンキースなどで活躍した通算137セーブの救援右腕デービッド・ロバートソン(36=前フィリーズ)、メジャー11年間で通算218本塁打を放ち、この5月までパイレーツでプレーしていたトッド・フレージャー内野手(35)、14球団を渡り歩き通算107勝を挙げた先発右腕エドウィン・ジャクソン(37=前タイガース)、昨季までカージナルスでプレーしていた強打の捕手マット・ウィータース(34)と、オールスター出場経験のある選手が名乗りを上げた。

同じく米大陸予選に出場するベネズエラ代表には先発右腕アニバル・サンチェス(37=ナショナルズFA)や、現在ヤンキース傘下3Aに所属するロビンソン・チリノス捕手(36)らが入る予定だ。サンチェスは今季開幕前にメジャーの所属先が決まらなかったものの5月上旬にはヤンキースなど複数の球団が興味を示し契約秒読みとも伝えられており、それを断っての代表入りだった。まだ現役を続行するチャンスも意思もある中で、今季だけは五輪にかけてみようとMLBをいったん離れることを決めたのは、大きな選択だ。

経験豊富な元スター選手がこうして五輪を目指すのは、ほとんどの選手が成し得ない明確な目標があるからだ。それは「ワールドシリーズのリングと金メダル」という最高栄誉の両取り。米国代表のロバートソンは09年にヤンキースで、ジャクソンは11年にカージナルスで、ベネズエラ代表のサンチェスは19年にナショナルズで、それぞれワールドシリーズ制覇を果たしている。米国代表のソーシア監督はドジャースの選手として現役時代に2個、エンゼルス監督としても02年に1個と計3個もワールドシリーズのリングを獲得しているが、それでも「リングと五輪メダルを獲得できる人はめったにいないので、狙いたい」と話していた。メジャーのワールドシリーズ制覇がいくら「ワールドチャンピオン(世界一)」と呼ばれても、やはり五輪のメダルは別格。メジャーリーガーたちも、そんな思いで東京五輪出場を目指す。5月31日(日本時間6月1日)から始まる米大陸予選に注目したい。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)