ヤンキースのアーロン・ジャッジ外野手(30)が開幕から好調を維持し、ア・リーグ本塁打王争いをリードしている。

2017年に52本塁打で当時の新人最多本塁打記録を塗り替えア・リーグ本塁打王となったジャッジは、その後は毎年のようにケガに悩まされ、期待外れといわれるシーズンが続いた。昨季は4年ぶりに140試合以上に出場し39本塁打をマークしたが、ブルージェイズのウラジーミル・ゲレロ内野手(23)やエンゼルス大谷翔平投手(27)らによって繰り広げられた本塁打王争いの陰に隠れ、目立たない印象だった。それが今季は、現地5月16日現在で12本とシーズン55・5本ペースで本塁打を量産している。ジャッジに一体何があったのか。何か変わったのか。

記事を読みあさってみたが、練習法や打撃に関して変わったという話は出ていなかった。スタットキャストの数字を見ても、打球速度やハードヒット率、バレル率などは昨季も今季もほぼメジャートップで変わっていない。

ジャッジの打撃を支えているのは、メジャー1年目の16年オフに出会った個人コーチだという。デビューしたその年は27試合で42三振を喫し打率1割7分9厘とさんざんだったが、個人コーチのおかげで打者として生まれ変わったとジャッジ自身も公言している。そのコーチはリチャード・シェンク氏といって、本職はビリヤード場の経営者。野球素人ではあったが、ジャッジと知り合う前からネット上の有名人だった。というもの、同氏はバットスイングのメカニクスを研究する野球マニアで、その分野に関しては類いまれな才能を発揮していたからだ。

ジャッジとシェンク氏は今も二人三脚で、打撃を追求し続けている。個人コーチは選手に同行してMLBの球場に入ることはできないため、練習はいつも一般の練習場を借りて行う。人目を気にせず練習に集中できる場所を確保するのは一苦労だが、貸し切りができる練習場が見つかると、集中的に通う。例えば今季は、チームがタイガースとの3連戦でデトロイトに遠征した4月下旬に、同市内で練習場を貸し切り3日間通いつめたそうだ。

その練習場にはシェンク氏の他に、サマンサ夫人がまるでマネジャーのように付き添っていたという。そういえば、昨季までと違うのは結婚したことだ。開幕前にヤンキースとの契約延長が合意に至らずシーズン後にFAとなることも、より一層と気を引き締めて野球に取り組むモチベーションになっているだろう。今季は飛ばないボールの影響か前年に本塁打王争いをしていた打者でもまったく本塁打が出なくなっているが、ジャッジのパワーはボールの違いに左右されるレベルではないということも、影響しているのだろう。何にせよジャッジや大谷が本塁打王争いをするとなれば、今季はまた盛り上がりそうだ。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)