エンゼルス大谷翔平投手(27)が先日のESPN「サンデーナイト・ベースボール」の日に休養を取り欠場したことが、ちょっとした議論を巻き起こしていた。

同中継番組は、日曜夜の全米放送枠ということもあり、MLB中継の中でも目玉のプログラム。日曜日は通常、全30球団の15試合が組まれるが、そのうち14試合はデーゲーム。1試合だけがナイターで行われ、注目度が高いカードがこの枠に選ばれる。どのカードを放送するかは当然、テレビ局側が決定する。

中継中には選手にマイクを着けてもらい、試合中に実況席からインタビューをするのが最近の恒例となっているが、これもESPNが高額の放送権料を払っているからできることだ。ESPNはMLBと今季から新規の7年契約を結んでおり、年間放送権料は5億6000万ドル(約728億円)にもなる。土曜日の全米中継を行っているFOXも同様に高額契約を結んでおり、この2ネットワーク局は、中継に関して絶大な力を持っている。

筆者の取材経験を思い返してみても、それを実感することは何度もあった。例えば、試合時間に雨が降る予報の日は早めに中止になることが多いMLBで、サンデーナイト・ベースボールの試合はなかなか中止にならなかった。「ESPNの中継だから、試合はやるよ」と米国人記者が口々に言っていたものだ。それだけESPNが力を持っているというわけだ。

そんなESPNサンデーナイト・ベースボール中継の日に大谷がスタメンから外れ、完全休養。西海岸のメディアは、大谷がそれまでほぼフル回転で出場していたことから「開幕から61試合中60試合に出場し続けた彼が休養するのは妥当」「エンゼルスは賢い選択をした」など好意的な声が多かった。だが大手がひしめき辛口な論調の多い東海岸メディアは、休養の判断に否定的だった。ニューヨーク・ポスト紙は「ESPNなどの中継は、全米の観衆にスター選手をお披露目しアピールするプラットフォームだ。その晴れ舞台で最大のスター選手をケガをしているわけでもないのに休ませるとは、テレビ局に対しても視聴するファンに対しても残酷な仕打ちだ」と批判し、休ませるとしても休養日と全米放送の日がかぶらないよう体調と休養のスケジュール管理をあらかじめしておくべきと指摘していた。もっとも「ネビン監督代行は、マドン監督の解任を受けて急きょ、チームを率いることになった」と同情的な声も。新米指揮官のネビン監督代行も、スター選手の起用に関してはこんな圧力もあるのだと、学んだことだろう。【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)