エンゼルス大谷翔平投手(28)が活躍してもチームが勝てない状況を表現する「なおエ」というネットミームがすっかり浸透しているが、米国でもこの同じ現象をネタにしたネットミームが話題になっている。

それは、大谷の別名ともなりつつある「Tungsten Arm O'Dyle(タングステンアーム・オドイル)」である。

その名前が今季一番バズったのは、開幕日のことだった。3月30日のアスレチックス戦で投打の二刀流で開幕投手を務めた大谷は、6回を2安打無失点、10奪三振と支配的な投球を披露したがチームは1-2で敗戦。孤軍奮闘してもチームが勝てないときの大谷を「タングステンアーム・オドイル」になぞらえられた。

このネタが最初に登場したのは2021年5月のこと。「Matt」と名乗るアカウントが投稿したツイートが大うけしたのだが、その内容は「エンゼルスの試合ハイライトを見るたび、マイク・トラウトは3本塁打を放って打率を5割2分8厘に引き上げ、ショウヘイ・オオタニはアクロン・グルームズメンのタングステンアーム・オドイルが1921年に達成して以来の偉業を成し遂げ、エンゼルスはタイガースに3-8で負けている」というものだった。タングステンアーム・オドイルという選手もアクロン・グルームズメンというチームも架空のもので、いずれもMattさんの創作だった。いかにも昔の野球選手に実在したかのような名前を使い、いかにも20年代中西部の野球の街をイメージさせるアクロン(オハイオ州)。グルームズメンは「新郎の介添人」の意味があるが、アクロンもグルームズメンも英語圏の人にとって言葉の響きが面白く、それだけでも笑えるそうだ。

これがMattさん自身の想像をもはるかに超えるレベルで拡散され、今も大谷が異次元レベルに活躍してもチームが負けたときは「タングステンアーム・オドイル」がバズる。

米野球データサイト「Baseball-Reference」は、今季開幕直後に「タングステンアーム・オドイル」の名前をサイト内で検索すると、大谷のページに飛ぶようにしていた。悪乗りとも思えるアメリカンジョークだが、いかにこの大谷の別名が米野球ファンの間に浸透しているかということを示すものでもある。

エンゼルスは、今季終了後にフリーエージェント(FA)となる大谷の残留を望んでいるが、そのためには今季何としてもポストシーズンに進出したい。それを達成するためには「タングステンアーム・オドイル」の名前をもうバズらせないことが必要だろう。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「水次祥子のMLBなう」)