野球の魅力って何だろう? よく考えることがある。自分がメディアの仕事に携わる前の学生時代「野球の素晴らしさを伝えたい」と周囲に話していた。今思えばなんとも抽象的な意思だ。だが、言葉で表せないような感動もあれば、人それぞれ、感じ方も違う。これだという答えもないだろうし、簡潔には説明できないことだとも思う。

エンゼルス大谷翔平投手(25)がこう言っていた。「野球は伝統も歴史もあると思うので、そこに新しい要素が加わっていけば、また面白い魅力がどんどん出てくると思います」。

投手か野手どちらかで活躍することが主流だったプロ野球、またメジャーリーグに二刀流の新風を吹き込んだ。日本ハムでは「1番投手」でスタメンや、DHで出場して最終回に登板など、アッと驚く野球にファンは魅了された。

メジャーでは1年目、DH出場か先発登板に限られていた。二刀流復活となる来季以降、日本時代のように、まさかと思える出場も見られるかもしれない。

大谷の二刀流ロードだけでなく、最近で言えばプレミア12で世界一となった侍ジャパン、メジャーでは球団初のワールドシリーズ制覇を達成したナショナルズなど、結束力と絆から生まれるドラマも、チームスポーツならではの魅力だろう。

個人的には今年9月29日、米カリフォルニア州サンフランシスコでのジャイアンツ-ドジャース戦で、米国ファンに愛されるベースボールの一端を見た。

レギュラーシーズン最終戦で、消化試合の一戦だった。しかも、初回に本拠地チームのジャイアンツが5失点。0-9の一方的な展開でも、ほとんどのファンが試合終了を待った。通算2003勝(2029敗)、ワールドシリーズを3度制覇した64歳、名将ボウチー監督のラスト采配だった。

試合後の退任セレモニーでは、同監督のスピーチにファンが立ち上がり、一言一言に耳を澄ませ、中には涙を流す女性ファンもいた。最後の3年は負け越しとなったが、名将の功績に向けられたファンからのリスペクトは、野球の歴史を感じさせる光景だった。

こう書き記してみても、野球の魅力にはいろいろな形がある。一言ではやっぱり表せない。逆にそれが奥深さであり、醍醐味(だいごみ)なのかもしれない。【斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)