キャンプ中断となる前、最後にメジャーリーガーと握手を交わしたのは、いつ、誰とだっただろう。記憶とメモをたどると2月29日、エンゼルスのアルバート・プホルス内野手(40)だった。全体練習を終え、三塁側スタンドのファンから求められたサインに応じていた。記者はグラウンド上で、その様子を見ながら数分間、待機。サインが終わると、目が合って自然と握手した。

ドミニカ共和国出身。メジャーの外国人選手では歴代最多の3202安打をマークするなど、数々の功績を残している将来の野球殿堂入り候補。レジェンドとの予期していなかった握手に動揺し、何と言葉を発したか正直おぼろげだが、「Howareyou?」と基本のあいさつを交わしたと思う。漠然とした一瞬のやりとりだったが、力強い握手だったことは、しっかり覚えている。

2月中ごろまで、各球団の全体練習も試合も、ほぼ通常通りに行われていた。握手の自粛などもなかった。だが3月に入ると、新型コロナウイルス感染拡大でメジャーの現場にも影響が出始め、瞬く間に事態は急変。9日にメディアの球団クラブハウスへの出入りが制限されると、それからわずか4日間でオープン戦、キャンプともに中断となった。

現時点で開幕の時期は決まっていないが、30球団によるアリゾナ州での開催など、開幕方式を巡って複数の案が米メディアの間で伝えられている。報道によれば、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離)の徹底が求められ、そうなれば握手やハイタッチも自粛となるだろう。

米国立アレルギー感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長は、事態が収束したとしても握手を控えるよう勧めている。あいさつのように行う握手やハグがある欧米の文化も、個人的には心地いいものだった。特にスポーツの真剣勝負で、熱くなった選手同士の触れ合いやガッツポーズは、見る者も興奮させる。元の形に戻るまで時間はかかるかもしれないが、感情表現が存分に出来るよう、スポーツの完全復活を待ちたい。【斎藤庸裕】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「ノブ斎藤のfrom U.S.A」)