今季のメジャー公式戦では、異例のハイペースで本塁打が量産されています。6月の月間本塁打数は、過去最多を更新する1101本に到達。「打高投低」の状態が顕著になり、球界全体に「飛ぶボール疑惑」が広がっています。

 実際、月間本塁打数のランキングには、

 <1>2017年6月=1101本

 <2>2000年5月=1069本

 <3>2017年5月=1060本

 と、上位3位までの2つに、早くも今年の2カ月がランクインしています。球宴休みもあり、試合数の少ない7月はともかく、今後、投手に疲労が出始める8、9月には、さらに増加する可能性があります。現在のペースでは、ステロイド時代の最盛期と言われる2000年の年間5693本を上回り、過去最多の6000本に達するとみられています。

 「飛ぶボール疑惑」の特集記事を掲載した「USAトゥデー」によると、レッドソックスのデービッド・プライス投手は、ボールが変わったことについて「100%(間違いない)。我々はみんなその話をしている」と明言しています。大多数の投手の感覚としては、これまでよりもボールの縫い目が低く、表面が硬くなった印象を持っているようで、ボールが動きにくくなったとも言われています。また、プライスをはじめベテラン投手には、これまでできなかった指の部分に、初めてマメができるようなったと証言する選手もいます。

 かつてメジャー球界は、観客動員増を目指す手段として、豪快な本塁打に依存し、「ステロイド渦」がまん延していくのを、長期にわたって見過ごしました。その後、対策を進めたことで現在ではかなりクリーンになりましたが、本塁打数は減少しました。

 その一方、近年ではハイテク技術の進歩に伴い、本塁打の飛距離だけでなく、打球の速度、角度などのデータにも注目が集まるようになりました。ファンにとって、豪快なビッグアーチが魅力であることは、今も昔も変わりません。そんな流れの結果、「飛ぶボール」が登場したと考える関係者も少なくありません。

 現時点で、MLB機構はボールの品質について、常に第三者の専門家によるチェックを受けており、「何も変わっていない」と、正当性を主張しています。

 最終的には、全日程終了後に、あらためて検証されるのでしょうが、いずれにしても「投手受難の時代」になったことは間違いなさそうです。