試合前、笑顔でストレッチをするエンゼルス大谷翔平
試合前、笑顔でストレッチをするエンゼルス大谷翔平

 野球に限らず、「一流」の本心を垣間見ることは、そう簡単ではありません。

 スラリと背が高く、いつも表情が柔らかな小顔のイケメンで、しかも、日米両国で「二刀流」として注目されているエンゼルスの大谷翔平投手も例外ではありません。

 日米を問わず、報道陣に対して、どんな質問に対しても、その対象者の目を見て、キッチリと応対する姿勢は、おそらくNPB時代と変わっていません。ファンやマスコミを大切にした日本ハムで育ったおかげなのでしょうか。常に、飾ることのない大谷の姿には、スーパースター、さらに「誰からも愛される選手」としての資質を兼ね備えているように映ります。

 一部では、優等生的な印象はあるかもしれません。ただ、試合後の限られた質疑応答の際、時折、大谷は、24歳の若者らしく、負けず嫌いならではの自分らしさを見せてくれることもあります。

 たとえば、8月5日のインディアンス戦の試合後。自らの打席を含め、試合全体の流れを、GMや監督のように冷静に分析しました。

 「逆転できるチャンスもありましたし、かなり安打も出ていたと思うので、なかなかあと1本が出なかったとは思います」

 その一方で、自らの打撃については、一瞬、眼を開いて口調を強めました。バットを折られながらも、左前へポトリと落とした適時打。打球としては満足できるものでないとしても、大谷は、自らを納得させるかのように力を込めました。

インディアンス戦の5回2死三塁、バットを折りながらも左前に適時打を放つ大谷翔平(撮影・菅敏=2018年8月5日)
インディアンス戦の5回2死三塁、バットを折りながらも左前に適時打を放つ大谷翔平(撮影・菅敏=2018年8月5日)

 「たまたま安打が出るというのもあると思うんですけど、それなりにいい状態という時は、そういう打球も多いのかなとは思うので、必ずしも偶然ではないのかなと思います」

 「たまたま」「それなり」という、少し曖昧な言葉を使いながらも、自らの感覚としては、決して「偶然でない」というのが本音なのでしょう。

 さらに、質問を続けると、大谷は安打になった理由を、真剣に補足しました。

 「きっちり振り切っているので、野手のスタートも1歩遅れたりとか。安打ゾーンが狭くなってしまうようなスイングだと厳しいかなとは思います」

 つまり、「たまたま」でも「偶然」でもなく、最後まで力強く振り切った結果が、安打になったという解釈でした。柔らかで、丁寧な言葉ですが、かなりの負けず嫌いであることは確かです。

 大谷に対する周囲の期待は極めて高いのですが、あくまでもメジャー1年目。ただでさえ、「二刀流」への困難な道を歩んでいます。

 野球選手に限らず、負けず嫌いは、成長するうえで大事な要素です。

 今後、メジャーでの活躍を期待していく上でも、大谷の「本音」には、しっかりと耳を傾けていきたいものです。