メジャーのストーブリーグがスタートして、もうすぐ1カ月が経過しようとしています。すでにFA(フリーエージェント)選手、トレード市場とも少しずつ動き始めていますが、大物選手に関しては依然として初期段階の様相を呈しています。とりわけブライス・ハーパー外野手(ナショナルズFA)、マニー・マチャド内野手(ドジャースFA)と、史上最高額の契約が見込まれる2人の動向が定まっておらず、市場全体が小康状態になっているのが現状です。

その一方で、今オフ、日本球界のFA市場は、例年になく、活発に動いています。丸佳浩(広島FA)に巨人やロッテが破格の条件を提示したほか、西勇輝(オリックスFA)ら、依然として争奪戦は続いているようです。また、浅村栄斗(西武FA)が楽天、炭谷銀仁朗(西武FA)が巨人入りを決断するなど、球界の勢力図が変わりそうなほどの動きを見せています。

これらの背景には、各選手だけでなく、球界全体の意識の変化があるのではないでしょうか。かつて日本球界は「移籍=マイナス」のイメージが根強く、1球団でプレーを続ける「生え抜き」を理想像とするような傾向がありました。もちろん、今でもその考えは残っているでしょうが、その一方で、各選手が環境を変えることを恐れず、新たな経験の場を積極的に求めるようになってきたような気がします。

過去20年来、日本球界のトップ級選手が、メジャーへ挑戦する流れが定着したことも見逃せないでしょう。野球選手としての寿命、特に全盛期は限られています。プロ入り以来、育ててもらった恩義を感じながらも、他球団の評価を聞き、別の可能性を探ることは、野球人としての幅を広げることにもつながるでしょう。たとえメジャー挑戦は無理でも、日本国内でより好条件のチームに移籍し、重圧を感じながらプレーすることは、また新たな勇気も必要です。

メジャーの場合、FAは日本のように「宣言」するものではなく、6年目終了後、自動的に公示されます。ハーパーら有力選手のような争奪戦になるケースはごく一部で、好成績を残せなかった選手は、なかなか声がかからず、低条件を飲まざるを得ないこともあります。場合によっては、移籍先が決まらず、志半ばで引退に追い込まれる選手も少なくありません。つまり、「FA=いいことずくめ」ではありません。

日本では、今も高額のFA補強に関して、批判的な声が聞こえることもあるようですが、メジャーでは少なくともチームを強くための企業努力として評価されます。高額資金を投入するわけですから、当然、失敗すればファンやメディアからバッシングを受けるリスクは付きものです。ただ、優勝すれば、すべては正解となるのがこの世界です。 FA市場の活発化に伴い、今後は国内(8シーズン)、海外(9シーズン)の資格獲得までの期間短縮見直しなど、新たな論議に広がることを期待したいものです。

【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)