メジャー1年目を迎えるマリナーズ菊池雄星投手(27)が、キャンプイン以来、「幸せな時間」を過ごしています。異なる野球、文化に順応することは簡単ではありませんが、それ以上に心を躍らせているのが、イチロー外野手(45)と一緒の空間にいる時のようです。

先日、内外野の連係プレーで初めて一緒のグラウンドでプレーした時は、イチローの一挙手一投足を見つめていました。ひょっとすると、時々、ボーッとしている日本メディアよりも熱心に「イチローウオッチング」に励んでいたと思われるほどです。練習後は、満面の笑みを浮かべながら「もうなんか、あの…うれしい、とかもあるんですけど、幸せっていうのが一番ですね」「感動しながら見てました」などと、振り返っていたほどです。

1991年6月17日。岩手・盛岡で菊池が生まれた年のドラフトで、イチローはオリックスから指名を受けて入団しました。つまり、菊池の人生とイチローのプロ野球生活は、ほぼ同じ期間ということになります。

すでに有名な逸話になりましたが、菊池が初めて観戦したプロ野球の試合が、00年6月6日の「オリックス-ダイエー(現ソフトバンク)」でした。実家からほど近い岩手県営野球場で行われた一戦に、当時8歳で野球を始めたばかりの雄星少年はイチロー見たさで向かいました。父雄治さんによると、「行って来ます、と言って、ひとりで出かけて行った」そうです。

この試合、「4番右翼」でスタメン出場したイチローは、第1打席で敬遠されながらも4打数2安打2打点と活躍しました。当時は、そのオフ、イチローのメジャー挑戦がウワサされており、どの球場でも日本最後の勇姿を見たいというファンであふれていたようで、雄星少年もその1人だったわけです

そんな大ファンだった雄星少年が、憧れのメジャーでイチローと一緒にプレーしているのですから「幸せな時間」と表現してしまうのも無理はありません。聞きたいことが「山ほどある」と言うほどで、これまたボーッとしているメディア以上の熱心さかもしれません。

先日、クラブハウスでイチローから声を掛けられ、滑るボールに苦心していることを伝えた際、「シアトルに行けば大丈夫。(乾燥地帯の)アリゾナが異常だから」とアドバイスされると、文字通り、直立不動で聞き入っていました。

今後は、オープン戦だけでなく、日本開幕戦、さらにその後…と、2人が同じ試合に名前を連ねる可能性も膨らんできます。

イチローが快打で援護し、菊池が勝利投手…ということにでもなれば、菊池はどんな言葉で「幸せな時間」を表現するのでしょうか。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)