「DFA」という言葉をご存じでしょうか。

メジャー開幕から1カ月が経過した5月初旬、MVPを3回獲得した大砲、エンゼルスのアルバート・プホルス内野手(41)に続き、レイズ筒香嘉智外野手(29)が、メジャーの40人枠から外れました。この一連の処置を、日本の各メディア(日刊スポーツを含む)は、便宜上「戦力外通告」と表記することが多いのですが、各ケースによって事情が異なることもあり、いわゆる日本球界の解雇を意味する「戦力外通告=退団」ではありません。

米国で「DFA」と呼ばれるこの措置は、「Designated For Assignment」の略で、大まかに意訳すると「仕事、役割を指定する」という感じになるのでしょうが、今のところ、正確に合致するような日本語訳が存在しません。というのも、米球界には日本のような統一契約書はなく、メジャー契約とマイナー契約に分かれており、在籍5年以上の選手の拒否権など、細かい条項がかなり複雑なためです。

基本的に「DFA」となった選手は、7日間のウェーバー期間中に獲得意思を示した他球団へ移籍するか、またはトレードとなる可能性があります。その後、ウェーバー期間が終了すれば、FA(フリーエージェント)となり、自らの意思で他球団との交渉が可能となります。また、マイナー行きを受け入れれば、その球団に残留する選択肢もあります。ウェーバー期間に移籍、トレードが成立すれば新球団には年俸負担の責任が生じますが、FA後の移籍であればメジャーの最低保障(約6375万円)の日割り分の負担となるため、ウェーバー後に移籍交渉が進展するケースがほとんどです。

ウェーバー後、FAとなったプホルスが15日(日本時間16日)、ドジャースと合意したことが米国内で報じられていますが、ドジャースが今季年俸約33億円のプホルスに支払う金額は約4800万円。プホルスの場合、自らプレー機会を求めていたこともあり、やはり「戦力外通告」の意味合いとは異なります。

プホルスに続き15日(同16日)、ドジャースへの緊急トレード移籍が明らかになった筒香にしても、当初、レイズ側はマイナー行きを要請したものとみられていました。現在のチーム状況ではプレー機会が限られるため、3Aで毎日プレーし、本来の調子を取り戻すことを想定していたようです。他球団との移籍交渉を進める一方、成立しないケースを想定し、「再調整」の意味合いも含んでいた事になります。

このほか、「DFA」には、事実上の解雇であったり、シンプルなマイナー降格の場合もあります。

1975年、パ・リーグが指名打者制を採用し、その後「DH(Designated Hitter)」の呼称が定着しました。

ただ、米球界で「DFA」と呼ばれる措置は、契約に関することだけに、日本で正確に理解されるようになることは、かなり難しそうな気がします。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)