昨年来、エンゼルス大谷翔平投手の「二刀流」での大活躍は、米球界にさまざまな形で影響を与えてきました。球界内の認識だけでなく、「二刀流」の登録枠をはじめ、降板後でも「DH」として出場できる「大谷ルール」が定められるなど、枠組み自体も根底から変わってきました。

7月に行われたドラフトでは、1巡目で二刀流選手2人が指名されました。ブレーブスが全体20位でオーウェン・マーフィー(18)、ジャイアンツは全体30位でレジー・クロフォード(21)を指名。これまでは、プロ入り後、投手か野手を選択して来ましたが、今回のクロフォードは、ドラフト1巡目で初の「ツーウエー・プレーヤー(TWP=二刀流選手)」として登録されました。このほか、下位指名の中にも「二刀流」で育成する予定の選手が現れるなど、もはや特例ではなくなっています。

9月上旬にフロリダ州で行われたU18W杯にも、複数の二刀流選手が出場していました。とりわけ注目を集めたのが、優勝した米国の主軸を務めた身長2メートル1センチ、体重100キロの巨漢、ブライス・エルドリッジ投手(18=バージニア州・ジェームス・マディソン高=右投げ左打ち)でした。台湾との決勝戦では、逆方向の左中間へダメ押しの3ランをたたき込み、その裏にはクローザーとして救援。時速95マイル(約153キロ)前後の速球を主体に無失点に封じ、MVPに選出されました。

同投手は、8月末に行われた全米中の高校選抜が集まる「オール・アメリカン・クラシック」にも招待されており、メジャーの全球団のスカウトがチェック済み。早くも来年のドラフトでは上位候補に挙げられています。もっとも、超高校級の大型選手とはいえ、素顔は普通の18歳。今後については「僕はあまり将来のことを考えすぎないんだ。もちろん、メジャーリーガーになってプレーしたいけど、今は目の前の瞬間を楽しみたいからね」と、若者らしい感性をのぞかせています。

着実に増え始めた「二刀流選手」。大谷自身、ベーブ・ルース以来の「2桁勝利&2桁本塁打」を達成した際に、淡々としたコメントを残しています。

「単純に2つやっている人がいなかっただけかなと思うので。それが当たり前になって来れば、もしかしたら普通の数字かもしれないですし、それは単純にやっている人が少ないっていうことかなと思います」。

数年前には考えられなかったような、二刀流が「当たり前」になる時代。大谷の影響力はメジャーだけでなく、アマ球界を含め、全米中にさらに広がっています。【四竈衛】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「四竈衛のメジャー徒然日記」)

U18W杯でMVPに選ばれ、記念品を手に笑顔を見せる米国エルドリッジ(2022年9月18日撮影)
U18W杯でMVPに選ばれ、記念品を手に笑顔を見せる米国エルドリッジ(2022年9月18日撮影)