大リーグのテレビ中継を見ていると、打撃成績で打率、本塁打、打点の次によく「ОPS」が出てきます。大リーグに詳しいユーザーならご存じかと思いますが、「on-base percentage plus slugging percentage」の略。つまり「出塁率+長打率」で算出する指標で、打者の総合的な攻撃力を表します。メジャーでは打率などと同等に扱われ、0・900以上で一流、1・000以上で超一流とされます。


日本選手の過去最高は、2004年のヤンキース松井秀喜がマークした0・912。メジャー通算175本塁打の松井でも、10シーズンで0.900超えは1度だけ。一方、エンゼルス大谷翔平投手(27)はメジャー1年目の18年に、規定打席不足とはいえ0・925をマーク。今季は8月26日時点で1・000を超えていました。

5日(米時間)の試合を終えて、ア・リーグ1位がウラジーミル・ゲレロ内野手(22=ブルージェイズ)で1・007、2位が大谷で0・970。3位アーロン・ジャッジ(29=ヤンキース)の0・917を大きく引き離しており、2人による一騎打ちの様相を呈しています。

ただ、ゲレロと大谷を比べると、大谷の方が圧倒的に高い評価です。なぜなら、各本拠地球場ごとの偏りを表す数値指標、いわゆる「パークファクター」によると、ブルージェイズの本拠地はトロントをはじめ、コロナ禍により7月まで代替本拠地になっていたダンイーデン、バファローまで、3球場いずれも打者有利な球場だからです。

また、ゲレロの本職は一塁手で守備の負担が軽く、捕手や遊撃手に比べて、あまり高く評価されません。投打の二刀流でフルシーズンを走り続ける大谷とは、大きく価値が異なります。

そんな状況だからこそ、大谷が1・000以上の指標を残したらすごいことです。特に、今年大リーグは低反発球の影響により、打撃成績が軒並み低調。ОPSも15年以降では最低の平均0・725だけに、なおさら規格外の働きと言えます。

ちなみに、元祖二刀流ベーブ・ルースの通算ОPSは歴代1位の1・1636。1918、1919年と投打二刀流で活躍した当時も、ア・リーグ1位のОPSをマーク。特に19年は驚異の1・114を残しました。また、現役1位は大谷の同僚マイク・トラウト外野手(30)で通算ОPSは1・0019。2015年、17~19年と毎年のようにリーグトップの座を維持し、それが「現役最強打者」と言われるゆえんの1つになっています。

果たして、投打二刀流として大谷がルース以来102年ぶりに、「1」の大台突破なるでしょうか。日本人初のタイトルを目指す本塁打王とともに、期待したいところです。【大リーグ研究家・福島良一】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「福島良一の大リーグIt's showtime!」)