相性は良くても油断大敵です。WBCで侍ジャパンが5大会連続で4強入り。20日(日本時間21日午前8時)準決勝の相手は、初めてベスト4入りしたメキシコに決まりました。

日本はプロが参加した大会で通算7勝2敗。主要国際大会(WBC、五輪、プレミア12)に限れば5戦全勝です。また、メキシコは同3大会で優勝も、決勝進出もありません。それでも、エンゼルス大谷翔平投手(28)を擁する侍ジャパンが歴代最強なら、メキシコ代表も同国史上、最強チームと断言できます。

最大の強みは、先発4本柱とクローザーの存在です。そして、1番ランディ・アロザレーナ外野手(26=レイズ)を筆頭とする強力打線です。投打ともに戦力が格段に上がりました。

日本戦の先発投手は、左腕パトリック・サンドバル(26)。ご存じ大谷の同僚で、エンゼルスでは先発3番手、メキシコ代表では先発2番手です。1次ラウンドの米国戦では3回1失点と好投。連覇を狙うホスト国からの金星奪取をけん引しました。

上位打線に左打者が多い日本に対し、左腕投入は当然の策。昨年のサンドバルは左打者への被打率が1割5分1厘、被長打率はわずか1割6分8厘、被本塁打は0でした。決め球のチェンジアップは、開幕から30打数無安打20奪三振と話題にもなりました。

一方、アロザレーナはキューバから亡命し、メキシコ国籍を取得。2020年にポストシーズン新記録の10本塁打を放ち、ア・リーグ優勝決定シリーズでMVP。今大会は1次ラウンドで打率5割、1本塁打、9打点でA組のMVPを獲得。準々決勝のプエルトリコ戦では試合を救う大飛球を好捕するなど、攻守に大活躍しています。とにかく、大舞台での勝負強さが光ります。

他にも、3番ジョーイ・メネセス内野手(30=ナショナルズ)は元オリックス戦士。昨年、30歳でメジャー初昇格を果たすと、13本塁打でレギュラーの座をつかみました。今大会は米国戦で2本塁打を放ち、勝利の立役者になりました。

さらに、昨年両リーグで8位タイの35本塁打を放ったロウディ・テレス内野手(28=ブルワーズ)ら強打者がズラリと並びます。予想スタメンは全員が、所属チームでベンチ枠26人に入る選手ばかりです。今大会は5試合計32得点のうち、17得点が2アウトから。粘り強い攻撃も特長です。

侍ジャパンが勝利に近づくカギはどこでしょうか? サンドバル攻略のためには、「四球」がポイントになるでしょう。米国戦では2四球の後は持ちこたえましたが、公式戦では四球をきっかけに崩れることが多いです。1番ヌートバー、2番近藤の出塁が突破口になるでしょう。

準決勝以降は球数制限が95球になります。それでもサンドバルは米国戦が55球だったので、日本戦は70球がメドになりそうで、4、5回での降板が予想されます。2番手以降で要注意なのは、右腕ハビエル・アサド(25=カブス)です。米国戦、準々決勝のプエルトリコ戦ともに、ロングリリーフで無失点。メジャー歴は浅くても、救世主に浮上します。

また、先発4本柱のうち昨季ナ・リーグ最優秀防御率の左腕フリオ・ウリアス(26=ドジャース)こそ登板できませんが、昨季12勝タイワン・ウォーカー(30=フィリーズ)、同13勝ホセ・ウルキーディ(27=アストロズ)の両右腕は登板可能です。「第2先発」として、ブルペン待機するでしょう。そして、今大会3戦2セーブ、防御率0.00の守護神ジョバニー・ガエゴス(31=カージナルス)には、出番を与えないことです。

侍ジャパンは過去2大会とも準決勝で、2013年はプエルトリコに1-3、2017年は米国に1-2で涙をのみました。いずれも先制点を許したことが、敗因に挙がりました。投手陣が好調だけに、先制点が欲しいところです。

いずれにしても、「大物食い」のメキシコには要注意です。過去にも五輪予選で敗退に追いやるなど「米国キラー」は今大会でも健在で、格闘王国メキシカンの血は、相手が強いほど燃え上がります。初戦のコロンビアこそ不覚を取りましたが、その後は4連勝。米国以外にも、カナダ、プエルトリコの有力チームを撃破しました。

侍ジャパンのキーマンを挙げるなら、やはり大谷でしょう。決戦の地ローンデポパークは投手有利な「ピッチャーズパーク」とはいえ、メジャーリーガーも認める大谷のパワーがあれば問題なし。仲良しサンドバルから豪快な1発で口火を切れば、決勝への扉は一気に開きます。栗山ジャパンが3大会ぶりに優勝トロフィーを持ち帰ってくれることを、みんなが待っています。(大リーグ研究家・福島良一)

侍ジャパン近藤健介(2023年3月12日撮影)
侍ジャパン近藤健介(2023年3月12日撮影)
プエルトリコに勝利し、喜ぶメキシコの選手たち(AP)
プエルトリコに勝利し、喜ぶメキシコの選手たち(AP)
準決勝の日本戦に先発するメキシコ代表のサンドバル
準決勝の日本戦に先発するメキシコ代表のサンドバル