かつては、闘争心をむき出しにして、三振を狙った時期もあった。だが、15年に右肘の手術を経験したこともあり、277奪三振でタイトルを獲得した13年当時ほど、三振に執着はない。ただ、三振を取れば、不運な安打や野手の失策とも無縁になる。「手っ取り早いし、確実なアウト。同時に球数も増えてしまう。そこそこ取りつつ、球数も抑えつつ、がベストですね」。内野ゴロや犠飛も許されない状況などで「そこそこ」三振を奪い、それ以外は極力省エネで球数を抑えて長い回を投げることへ、ダルビッシュの理想は形を変えた。

 快記録を遂げたといえ、12敗目の事実も無視できない。真価が問われるポストシーズンまで時間的猶予も限られてきた。「これも僕の人生の一部、うまくいってない時期の一部。ただ、諦めたり、前に進むことをしないことだけはしない、と決めてます」。もがき苦しみながらも、ダルビッシュがうつむくことはない。【四竈衛】

 ◆最速1000奪三振 ダルビッシュの128試合での達成は、カブスなどで活躍したウッドより6試合も早い最速記録。そもそも150試合未満で成し遂げた投手がクレメンスやグッデン、野茂ら8人しかおらず、あのランディ・ジョンソンですら152試合かかっているだけに、意味のある数字だ。またダルビッシュの奪三振率(9回あたりの三振数)11・07は、通算750イニング以上投げている投手の中ではメジャー歴代1位(2位はジョンソンの10・61)。