韋駄天(いだてん)ぶりは健在-。マリナーズのイチロー外野手(44)が、オープン戦2試合連続となるホワイトソックス戦に出場し、復帰後の初出塁、初得点を記録した。「2番左翼」で2打数無安打ながら1四球1得点。ファウルで粘って出塁し、快足を飛ばして得点する、持ち味を存分に発揮した。

 粘りとスピード-。わずか2試合目にもかかわらず、イチローが随所に「らしさ」をのぞかせた。4回裏の第2打席。2球で2ストライクと追い込まれながら、ボール球を見極め、8球目で四球を選んだ。復帰後5打席目で初めて出塁。その直後、3番セグラの打球が右翼線に向かうと、打球の行方を見届けることなくアクセルを踏んだ。

 「足が一番(仕上がるのが)遅いですからね。ああいうのは助かるよね。ベースランニングやっても試合とは全然違うんで」

 実戦で求めていたのが、ベースランニングと相手中継プレーとの真剣勝負。合流が遅れたイチローにとっては初の実戦走塁となったが、しなやかな走りで次々にベースを蹴り、一気に生還した。涼しい顔でダッグアウトへ向かう際には、スタンドから大歓声を浴びた。それでも、イチローにすれば、本来の感覚には届いていない。

 「どうですかね、もうちょっと。まだ重い感じがする。推進力がなかなか出てくれないというか、足を使おうとするんですよね。足を使わないで前に進む感覚が欲しいんですよ。それが出るまでちょっと時間がかかる」

 現時点でイチローの極意に達していないとはいえ、昨年の同時期は全力疾走に程遠い状態だった。守備練習中に、若手外野手と接触。休養を余儀なくされ、調整ペースが大幅にずれ込んだ。だが、今年は「抑える理由がないですから」と、不安材料は見当たらない。

 この日は、イチローにとって今年初のナイター。前日に続き、この日も飛球を処理する機会がなかったものの、キャンプ施設特有の照明に「暗いっす。外野手のフライ、大変ですよ」と笑うばかりだった。復帰後初安打がお預けになっても、開幕へ向けた軽快な足取りは変わっていない。【四竈衛】