メジャー1年目、エンゼルス大谷翔平投手(24)は、打者として打率2割8分5厘、22本塁打、61打点の成績で、左の強打者という印象を十分に残した。メジャー各球団の配球データを振り返ると「大谷対策」はそれぞれのチームで分散。あるメジャーの捕手は「弱点を見つけるのが難しい」と明かすなど、大谷の弱点はどこにあるのか、判断に苦しんでいたことがうかがえた。

MLBの公式データサイト「Baseball Savant」で詳細に分割された配球(図1)を参考にすると、対戦の多かったア・リーグ西地区のアストロズは、図1の白ヌキ部分、内角中心の攻めだったことが分かる。一方、東地区のヤンキースは、エースのセベリーノが内角球を本塁打されたこともあり、ヤンキース戦で全70球のうち、内角はわずか4球。外角攻めを徹底した(図2)。対戦した全球団の配球を割り出すと、内角球は25%、外角球が28%と二分化していた(図3)。

(図1)
(図1)
(図2)
(図2)
(図3)
(図3)

内野手がポジションを変えるシフトなど、データ重視のメジャー野球では徹底した対策が多い。大谷と同じ左の強打者、ナショナルズのブライス・ハーパー外野手(26)の場合、対戦チームの攻めはほぼ外角が中心だ。内角16%に対し、外角は38%と圧倒的に多い(図4)。球数が最も多い部分の打率が今季1割2分5厘(図5)というデータを考えれば、当然の攻めと言える。このように、あるゾーンを弱点と判断して徹底的に攻めるケースが多いが、それが大谷には当てはまらなかった。

(図4)
(図4)
(図5)
(図5)

要因の1つに「弱点つぶし」が考えられる。7月20日から8月2日の期間、メジャー最長の15打席連続無安打を記録するなど、状態を落とした。この間、全体の32%を占めた内角攻めにも苦しみ、スイング軌道が崩れた。だが、8月3日のインディアンス戦、その内角をさばいて逆方向へメジャー10号本塁打。内角が苦手とされつつあったデータを一気に払拭(ふっしょく)した。

シーズン後、同リーグ同地区のアスレチックス・メルビン監督は言った。「対策を練って彼を打ち取ったと思ったら、次の対戦では同じようにはいかない」。8月まで打率1割台だった左腕に対しても、9月の1カ月間では、2割9分7厘。大谷は対左腕という点でも弱点をつぶしつつある。打者に専念する来季、各球団がどう大谷対策を立ててくるか、注目だ。【斎藤庸裕】