引退表明から一夜明けたマリナーズ・イチロー外野手(45)が22日、成田空港発の航空機で渡米した。前夜に日米通算28年目でユニホームを脱ぐことを表明すると、日本政府が国民栄誉賞授与を検討するなど、日本全国がイチローの打ち立ててきた数々の偉業にあらためて感服した。深夜に行われた1時間23分にも及んだ会見で、野球の将来を託したのはエンゼルス大谷翔平投手(24)。初めてポスティング移籍し、日本人野手の評価を一気に高めた大リーグの先駆者は「世界一の選手にならないといけない」と、二刀流に挑む後輩へパイオニア魂を託した。

イチローは黒のニット帽、白の無地のロングTシャツにジーンズというカジュアルな格好で、成田空港に現れた。

グレーのジャケットとぬいぐるみが付いた白いトートバッグを手に持ち、傍らには弓子夫人を伴った。居合わせたファンからの「お疲れさまでした」の声に振り返って会釈し、機上の人となった。

現役時代の背番号と同じ51ゲートを通った。全日空の成田空港発シアトル行きは通常「58B」搭乗口を使用するが、この日は「51」に変更。全日空関係者は「オペレーションに問題がない範囲だったので、ご活躍に敬意を表し、背番号に合わせて51に変えさせていただきました」と説明した。全日空の粋な計らいに、柔和な表情を浮かべて日本を後にした。

前夜の引退会見で、何度も高いポテンシャルを絶賛したのは「翔平」と下の名前で呼んだ大谷だった。「翔平はケガを治して。スケールは大きいですよ。物理的にもアメリカの選手に劣らない。あのサイズで機敏な動きができるのは、いないですからね。世界一の選手にならないといけないんですよ」とエールを送った。

イチ流の仰天アイデアは、1年ごとに投手と打者を交互に行う新二刀流だ。「サイ・ヤング賞とホームラン王を取ったら。でも翔平は想像させるじゃないですか。ピッチャーとして20勝するシーズンがあって、翌年にはMVPを取ると想像したら化け物ですよね」。筋肉増強剤がはびこっていた時代の大リーグに、スピードと技術で平成を駆け抜けたイチロー。新たな時代の新たな野球を大谷に託した。