カブスのダルビッシュ有投手(34)が29日(日本時間30日)、レッズ戦に6回7安打無失点8奪三振と力投し、メジャートップタイとなる今季6勝目(1敗)を挙げた。レ軍秋山翔吾外野手(32)とのメジャー初対決は、2打数1安打と打撃妨害だった。6戦連続クオリティースタート(6回以上、自責3以下)で6連勝。防御率はリーグ2位の1・47と、サイ・ヤング賞候補の最右翼に浮上してきた。

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メジャー最高レベルになっても、ダルビッシュは日本人後輩ルーキーとの対戦を意識していた。「情があるじゃないですか、いい子だし…。だからロボットだと思って投げました」。

6回の第3打席。カウント0-2からの5球目。96マイル(約155キロ)の内角高め速球を右前へ運ばれた。11年以来9年ぶりの対戦。過去5打席の対戦は、ほぼ記憶にない。事前にデータをインプットしたものの、“ロボット”のスイングは鋭かった。「納得できる球を完璧に打たれた。元々いい打者なのは分かってましたが、思っていた以上の打者。今の数字(打率1割台)の打者では絶対ないと思いました」。1年目で苦労する秋山に対し、柔らかい表情のまま、激励を込めるかのように印象を口にした。

新境地の投球だった。圧倒的な力でねじ伏せることもあれば、打者心理を読んだ緻密な配球でも凡打を築く。7試合、43回で奪三振が多く(52)四球が少ない(8)。理想的な内容に、米メディア間では、サイ・ヤング賞の話題が盛んになってきた。ダルビッシュは英語で「考えたこともない」とサラリと受け流すものの、早くも防御率1位のマックス・フリード(ブレーブス)との一騎打ちの様相を呈してきた。

公私ともに親交のある盟友バウアーとの投げ合いを制して6勝目。「自分が勝っているということは、チームが勝っているということ」。円熟期を迎えたダルビッシュの視線の先には、個人タイトルではなく、世界一しかない。