今季のサイ・ヤング賞が11日(日本時間12日)発表された。ナ・リーグで有力候補とされていたカブスのダルビッシュ有投手(34)は、全米野球記者協会(BBWAA)の投票で1位票3、計123ポイントで2位だった。受賞は最優秀防御率のタイトルに輝いたレッズ右腕トレバー・バウアー(29)で、1位票27、201ポイントを獲得した。ア・リーグの最終候補3人に入っていたツインズ前田健太投手(32)は2位票18、92ポイントの2位。受賞はインディアンスの右腕シェーン・ビーバー(25)で、1位票30の満票、計210ポイントだった。

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【解説】大接戦が見込まれていたナ・リーグのサイ・ヤング賞は、バウアーとダルビッシュの1位票が「27-3」と、事前の予想以上に大差が付く結果となった。ただ、2位票が「3-24」だったことからも、ほぼ一騎打ちの状態だった。

明暗を分けたのは、9月終盤の3~4試合だった。9月4日までに7連勝を飾り、防御率1・44となった時点では、ダルビッシュが圧倒的に優位だった。ところが、その後の3試合で2敗。同20日のツインズ戦で6回4失点と、防御率が2・22と下降したことで、賞の行方は混沌(こんとん)としてきた。

一方のバウアーは、9月4日の時点で3勝3敗、防御率2・05。だが、そこから巻き返し、9月は2勝2敗ながら5試合連続でクオリティースタート(6回以上、自責3以内)の好投を続けた。同23日には、ポストシーズン進出をかけた一戦に中3日で登板し、8回1失点の快投。12奪三振で計100Kの大台に乗せたことで、一気に好印象が定着した。

もっとも、1位票の結果ほどの差はなかったとの声も聞こえる。バウアーが登板した11試合でレ軍は6勝5敗、ダルビッシュの登板12試合でカ軍は9勝3敗。自責が付かない失点は、バウワーの3に対し、ダルビッシュはわずか1。投球回数がリーグ最多でありつつ、味方の失策にも耐えたダルビッシュの貢献度が、登板試合の勝率に表れている側面も見逃せない。

コロナ禍の影響で60試合に短縮され、同地区内の対戦に限られた今季は、他地区の担当記者とすれば、数字を基準にして投票順位を判断せざるを得なかったはず。78ポイントの差は、今季の特殊性による結果と言ってもいい。【MLB担当=四竈衛】

◆選出方法 MVP、サイ・ヤング賞、新人王、最優秀監督賞の各賞は全米野球記者協会(BBWAA)所属記者の投票によって決まる。原則、30球団の各本拠地から2人ずつ投票者として選ばれ、所属するリーグの賞に投票する。投票は公式戦終了後に行われるためポストシーズンの成績は影響しない。MVPは10位、サイ・ヤング賞は5位、新人王と監督賞は3位まで投票し、順位に応じてポイントが加算される。MVPは1位14点、2~10位は9~1点。サイ・ヤング賞は1位7点、2~5位は4~1点。新人王と監督賞は1位5点、2位3点、3位1点。12年から各記者の投票内容が公開制になった。