【テンピ(米アリゾナ州)3日(日本時間4日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、特大のアーチをかけた。レンジャーズ戦に「2番DH」で出場し、5回の第3打席で中堅バックスクリーン後方へ特大2ランをたたき込んだ。約32フィート(約10メートル)の壁を越える一撃は、推定飛距離468フィート(約142・6メートル)。メジャー自己最長の449フィート(約136・9メートル)を更新した1発は、メジャー4年目で初のオープン戦本塁打だった。5日(同6日)には投手でアスレチックス戦に登板予定。一足先に打者として完全復活を印象づけた。

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メジャー自己最長弾に、大谷の今季の変化が詰まっていた。体の軸がぶれない。「上体がしっかり残っている段階で、打ちにいくかどうかを下半身で決めている感じはするので、いい傾向かなと思います」。

オフ期間、軸足の左足に体重を残すことを徹底したことで

・下半身主導のスイング

・上体が前に突っ込まず球を見極める「間」が生まれる

・左膝がすぐに内側に折れないことで、体の正面で球を捉えられ強い打球が打てる

ようになった。持ち味のスイングスピードを生かし、“動きだしの下半身をスイングが追い越す”理想的なスイングイメージ。しっかりと高めの速球をバックスクリーン後方までかっ飛ばした。

昨季は、打撃でも不振を極めた。打率1割9分。特に苦しめられたコースが高めの直球だった。19年9月の左膝手術の影響から、左足が踏ん張りきれず、膝がすぐに折れて下半身が粘れない。結果、高めのボールには両足が伸び上がったようなスイングで手打ちになっていた。19年と比較すると、真ん中高めのコースに限れば、直球の打率は2割9分4厘から9分1厘に大きく低下。三振率は23・5%から45・5%に跳ね上がった。直球で高めを攻められ、低めの変化球で打ち取られることが、パターン化するほどだった。

昨季でいえば、球に対して自分から“迎えにいく”状態。一方今季は、自分の間合いで“待つ”ことができ、どっしりとした構えの下半身がスイングの軌道を安定させている。「ある程度いい角度で上がっているということはいい軌道で(ボールを)捉えられているので、結果的にホームランになる確率が高い」。侍が刀を抜くように速く、鋭いヘッドスピード。この1発の打球速度は107マイル(約172キロ)に達し「スイングも良かったですし、見送っている感じも、見え方も良かった」。昨季はつかんでも続かなかった手応えを、開幕まで約1カ月前で手にした。

体のシルエットの違いも歴然。今季序盤に「去年は膝のリハビリがメインだったので、強化するというのではなかった。しっかり下半身はできた」と明かしたように、構えた時点から重厚感がある。「もっともっと良くなると思いますけど、しっかりシーズンに向けて上げていけたら」。自信に満ちた言葉が、さらなる期待を抱かせる。

▽エンゼルス・マドン監督(軸足に体重を残す大谷の打撃フォームに)「バランスが良くなって、アプローチも全体的に良くなった。これまでは高めの速い球を苦にしていたが、比較的簡単に捉えた。身体的、精神的にいい状態」