【アナハイム(米カリフォルニア州)20日(日本時間21日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(26)が、ド派手にマウンドに戻ってきた。

右手中指のマメの影響で調整が遅れ、中15日で今季2度目の先発に臨んだレンジャーズ戦で、4回1安打無失点。7奪三振、7四死球の大荒れだった。直球は抑えめで最速97・7マイル(約157キロ)。制球の自己評価は「0点」も、えげつないスプリットを駆使し、毎回三振を奪った。

   ◇   ◇   ◇

スタジアムが盛り上がり、静まり、天と地を行き来するような80球だった。大谷は序盤から乱れた。「自分でピンチを招いて、自分で抑えてっていうだけの感じだった」。1回1死から3者連続四球。2回以降も乱れ、計7四死球を与えた。制球の自己採点は「0点ですね」と自虐で笑うほど、あちこちに散らばった。荒れに荒れながら、1安打に抑えて無失点。内容に差が激しい投球だった。

頼みの綱は、えげつないスプリットだった。「スプリットしか良くないなという感覚だったので。そこは1つ良かったところ」。全投球の35%の28球を投じ、レ軍打線を翻弄(ほんろう)した。「全体的にはやっぱり、ストレスがたまってしまうようなリズムで投げていた」と反省点はあったものの、敵将から「Nasty(えぐい)」と称される精度の高さだった。

ただ落ちるだけではない。2回、ガルシアの2球目はシュートしながら食い込んで空振り。4回、カルフーンへの3球目はスライダーのように横に曲がって落ちた。「不規則というか、カットしたり、右側に流れたり、そういう球種だと自分で思っているので。回転がかかってた方が判別しにくいですし、有利になる点は多い」。イメージ通りに左右に動く“魔球”で失点をことごとく防いだ。

スプリットを地に落とし、7つのうちの6三振を奪った。一方で、右手中指のマメを再発させないよう、直球の球速は最速157キロで抑えめ。練習ではなく、あえて実戦の強度で投げることで皮膚を強化するための登板でもあった。「試合の中で投げないと良くならないので。100%でいくという感じではなった」。それでも、無失点に抑えてチームの勝利につなげた。

今後、指の状態に問題がなければ次回はローテーション通りに中5日か、中6日で登板となる見込み。「試合の中の強度で80球こなせたというのは、次につながるところじゃないかなと思いますし、次、全力でいけるんじゃないかなと思います」。約3年ぶりの復活星へ、全開の大谷で挑む。

 

◆Nasty(ナスティ) スラング(俗語)としてよく使われる言葉で、野球では投手の球種の質などに対して「えぐい」、「すげぇ」といった意味で精度の高さを表現することが多い。手がつけられないほどの威力や、変化や見極めの難しい球で、例えばヤンキースの抑え左腕チャプマンの90マイル(約145キロ)を超えるスプリッターと、100マイル(約161キロ)を超える速球などが称される。エンゼルスで同僚のトラウトも、メジャー1年目の大谷の投球を「Nasty」と表現したことがある。

 

▽エンゼルス・マドン監督(大谷のスプリットについて)「ダイナミックな球種だ。どれだけ素晴らしい球種かというのは、打者の反応が教えてくれる。これからも自信をつけて、良くなっていくだろう」

 

○…スプリットの回転数にも大幅な変化があった。この日、回転数の平均は2197。メジャー1年目の1308に比べて、約900も数値が上がっている。落差を生むには回転数を少なくするという点では逆行しているが、大谷は「技術じゃないと思っているので。回転数がどうのこうのとか、軸がどうのこうのとか、あんまり考えない方がいい球種かなと僕的には思ってます」と淡々と話した。

 

○…シーズンで初めてバッテリーを組んだ日系人のスズキが、大谷の投球を称賛した。イニング間に話し合いながら配球を組み立て、無失点に封じた。「彼はどうピッチングをすべきか分かっている。ボールにスピンをかけ、どんな時でも、全ての球種を投げられる。これからどんどん良くなる」。2回には二盗を阻止し、守備でも大谷をバックアップ。7回には今季1号2ランを放ち、勝利に貢献した。