二刀流の聖地で2ケタ勝利へ王手とはならなかった。エンゼルス大谷翔平投手(27)が「1番投手」で出場したが、メジャーで初となる1試合3本塁打を浴びるなど5回5安打4失点。打者では4打数無安打3三振だった。勝ち投手の権利を得て降板したが、8回に救援陣が打ち込まれ、19連敗中だったオ軍にまさかの逆転負けを喫した。敵地のメリーランド州ボルティモアは元祖二刀流ベーブ・ルースの生まれ故郷。大谷は粘投も、9勝目が目前で消えた。

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球場から約200メートル、住宅街の一角に佇むベーブ・ルースの生家が、記念館として残されている。館長のショーン・ハーン氏は、ルースの気持ちを代弁するかのように言った。

「彼は、野球にとって素晴らしいことの全てに賛同していた。もしベーブが今も生きていたなら、大谷を応援していただろうね。そして、大谷が投げる試合を見に行っていたと思う」

2階建てで、西洋の昔ながらの雰囲気が漂う。ルースの寝室やリビングルームが残され、二刀流で活躍したレッドソックス時代や打者に専念したヤンキース時代の写真も飾られている。ハーン館長はルース家とともに記念館を17年間、運営。そのうちの1人でルースの娘ジュリア・スティーブンズさんは19年に102歳で亡くなった。「3年前かな。彼女は大谷に非常に感激していた。『ベーブは、記録は破られるべきと思っていて、それを望んでいた』と彼女は言っていたよ」とハーン氏は明かした。

約150年の歴史で唯一、1人の選手が2ケタ勝利と2ケタ本塁打を同時に達成した1918年。大谷はその記録に近づいている。一方で、同年の打撃成績を比較すれば大谷が上。自らの記録に並び、また超える存在が現れた。野球が大好きなルースも天国で笑っているに違いない。【MLB担当=斎藤庸裕】