偉大な成績を残したバリー・ボンズ氏(57=元ジャイアンツ)、ロジャー・クレメンス氏(59=元ヤンキース)が候補資格10年目となる今年も選出されず、ついに野球殿堂入りを果たせず終わった。ボンズ氏は66・0%、クレメンス氏は65・2%の得票だった。米メディアから「ボンズ氏落選は、野球殿堂の失敗」との声も出ている。

筆者は取材を通し、シーズン最多記録の73本塁打をマークした2001年頃からのボンズ氏、ヤンキースなどで活躍した99年から07年までのクレメンス氏を身近で見ていた。

ボンズ氏は当時、メディア嫌いで知られ、ベテランの米国人記者にとってさえ近づきがたい存在だった。シーズン本塁打記録を作った01年は異例の取材制限が敷かれ、時々行われる会見以外は取材することができなかったと記憶している。米国人記者からは当然、不満の声が出ていた。

記録を作った翌年の02年は通常の取材体制に戻ったが、ジャイアンツの番記者でさえ同氏にはほぼ近づけなかった。本当に機嫌の良いときは囲み取材に応じたことがあったが、そんなことは本当に希だ。現役時代のメディア嫌いが投票に影響したとはいわないが、もし現役時代にメディア受けのいい選手だったら、もう少し違う結果になっただろうか、とは考える。薬物スキャンダルが出たのはその翌年、03年のことだ。

クレメンス氏は、ヤンキース時代は寡黙にひたすら練習に没頭するタイプの選手という印象だったが、所属球団に特別扱いを要求した過去やいくつかの無神経な発言でたびたび批判にさらされた。07年のミッチェルリポートでクレメンスの名前が出たことで薬物スキャンダルとなったが、投手でしかも圧倒的な成績の薬物使用は衝撃的だった。【水次祥子】