投打のレジェンド2人に厳しい審判が下った。全米野球記者協会(BBWAA)による今年の米野球殿堂入りの投票結果が25日(日本時間26日)に発表され、歴代最多762本塁打を記録したバリー・ボンズ氏(57=元ジャイアンツ)と、サイ・ヤング賞を歴代最多7度受賞したロジャー・クレメンス氏(59=元ヤンキース)が落選した。ともに候補資格は今年が最終年の10年目。現役時代に使用疑惑が浮上した薬物スキャンダルの逆風により、規定得票率の75%を満たすことなく、記者投票での選出資格を喪失した。

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<殿堂資格喪失の背景>

メジャー最多本塁打記録を持つボンズ、史上最多7度のサイ・ヤング賞に輝いたクレメンスが選出されなかった背景に、「ステロイド時代」の暗い影があったことは言うまでもない。ただ、球界内の認識は着実に変わりつつあった。有資格1年目の03年、2人の得票率はともに40%にも満たなかった。その後の9年で増加したものの、当選ラインの75%には届かなかった。

90年代後半から00年代前半、球界に禁止薬物常用が広がったことで、03年からドーピング検査が義務化された。翌04年から徐々に罰則規定が強化された。その間、疑惑が浮上したボンズ、クレメンスとも引退するまで全ての検査をパス。引退後、裁判沙汰となったが、いずれも使用は立証されなかった。

一方で、すでに殿堂入りしているマイク・シュミットやリッチ・ゴセージ(元ダイエー)が規制がなかった現役当時、現在の禁止薬物「アンフェタミン」を使用していたことを告白。合否の線引きが曖昧になり始めた。ボンズらに「灰色」のイメージは残ったものの、近年は圧倒的な実績を尊重する論調が広がり始めていた。実際、14年までのように資格年数が15年であれば、75%に到達するとの声もある。

もっとも、検査で「陽性反応」を示し、出場停止処分を受けたマニー・ラミレス、アレックス・ロドリゲスらに対する声は依然として厳しい。家庭内暴力が伝えられたオマー・ビスケルが得票率を落としたように、数字だけでなく、スポーツマンシップや社会性は投票に影響を与えてきた。

将来的には、サイン盗みに関与していた選手が資格を得た場合などに、再び反対の声が出る可能性は高い。「記者は裁判官ではない」との意見もあるが、今後も論議は尽きそうにない。【MLB担当=四竈衛】