【アナハイム(米カリフォルニア州)7日(日本時間8日)=斎藤庸裕】エンゼルス大谷翔平投手(27)が、二刀流10年目の開幕で歴史を塗り替えた。アストロズ戦に「1番投手」で出場。開幕投手の1番打者は近代メジャーでは史上初で、4回2/3を4安打1失点にまとめた。第1球で、いきなりこの日最速の99・8マイル(約161キロ)をマーク。打者では4打数無安打だったが、今季から導入された「大谷翔平ルール」も適用され、メジャーリーグに新たな歴史を刻んだ。
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大谷が投げて、打つたびに、スタジアム全体が震えるようだった。今季も開幕戦からいきなり、歴史が動いた。満員の4万4723人の注目は二刀流のプレーに一点集中。それでも「気負いみたいなのはなかった。いつも通りマウンドに立ったつもりです。ただ、力が入る部分があったと思う」。言葉通り、1球目にこの日最速の99・8マイル(約161キロ)をたたき出したが、ワンバウンドとなった。力が入っても当然のメジャー初の開幕マウンド。だが、試合後は「緊張はしなかったです」と涼しげな表情で言った。
メジャーリーグで初めての光景が展開した。今季から導入された「大谷翔平ルール」が早速、適用された。80球目を投じて交代を告げられた5回2死。大谷はベンチへ戻るとすぐに打撃用のすね当てを着用した。降板した投手が即、打撃準備する姿自体、過去に見たことはない。電光掲示板に表示されていた「P(投手)」は5回から「DH」に変わった。「監督次第ですけど、自分の体としては全然いけるので、自分で取られた点を取りたいという気持ちで打席に立ちましたし、最後もそういう気持ちでいってるので、出られる限りは出たいなとは思ってます」と手応えを口にした。
2点を追う8回2死三塁では、内角直球を捉えた。角度よく上がった打球は右翼席へ届くかと思われたが、フェンス手前で失速。一斉に上がった歓声はため息に変わった。大谷も「最後に1本打てていれば、また違った展開になった」と悔やんだ一打だった。投手では「あまり良くなかった」と宝刀スプリットが本調子ではなかった中で9奪三振。三振の結果球は直球4、スライダー3、カーブ1、スプリットが1。持ち球を巧みに織り交ぜる対応力をみせ、降板時にはスタンディングオベーションと拍手喝采を浴びた。
試合開始時の気温は約34度。猛暑の中で全力を尽くした。何度も響いたMVPコールに「うれしかったですね。去年、いい成績を残せて、そういう風に言ってもらえるのはありがたいです」。「大谷翔平ルール」と名付けられたことについては「ありがたいなと思ってやらせてもらっています」と感謝した。熱狂の再来となった開幕戦。二刀流10年目の大谷劇場は、エンジン全開で幕を開けた。
◆大谷世代 94年生まれは球界以外も傑出した才能がズラリ。五輪金メダリストが多く、フィギュアスケートの羽生結弦、スピードスケートの高木美帆、競泳の萩野公介、レスリングの川井梨紗子、土性沙羅がいる。各競技のトップクラスでもバドミントンの桃田賢斗、奥原希望、競泳の瀬戸大也が同世代だ。NBAの渡辺雄太は大谷と共通の知人、瀬戸を通じて連絡を取り合う仲となった。芸能界でも広瀬アリス、Sexy Zone中島健人、伊藤沙莉、ももいろクローバーZの百田夏菜子、山崎賢人、二階堂ふみが活躍。ジャスティン・ビーバーも言うまでもない世界的スターだ。
○…大谷の大ファンでFOXスポーツの解説者ベン・バーランダー氏(30)が、今季の展望を語った。昨年はMVP獲得を予言し、「今年も大谷の年。50本塁打を打つ。投手では10~15勝」と期待した。開幕戦の試合前には隣接するスポーツバーで今シーズンの見どころをYouTubeで配信。その後、会場に実兄でアストロズのジャスティン・バーランダー投手(39)がサプライズで登場。「来るなんて知らなかったよ。すごいクールなことだね」とうれしそうだった。
▼アストロズが開幕戦で10年連続勝利。1901年以降の近代野球では初めてで、1887~1896年のボストン・ビーンイーターズ(現ブレーブス)以来。