【テンピ(米アリゾナ州)15日(日本時間16日)=四竈衛】WBC世界一から開幕投手へ-。

メジャー6年目を迎えるエンゼルス大谷翔平投手(28)の春季キャンプがスタートした。エ軍のバッテリー組がキャンプイン。大谷は早速ブルペンで力強い球を投げ込むなど順調な仕上がりを披露した。3月1日(同2日)のオープン戦(対ブルワーズ)登板後、侍ジャパンに合流するため帰国する見込み。WBC初戦となる同9日の中国戦(東京ドーム)に続き、公式戦では同30日(同31日)の敵地アスレチックス戦で2年連続の開幕投手を務めることが最有力となった。

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昨季、初の開幕投手を務めた大谷が、今季も先陣を切って開幕マウンドに向かうことが濃厚となった。キャンプインしたこの日、ネビン監督がWBCの侍ジャパンを含め、大谷の登板予定について、大筋のプランを明かした。同監督によると大谷は25日(日本時間26日)に実戦形式のフリー打撃に登板し、その後は打者として試合に出場。3月1日(同2日)のブルワーズ戦(テンピ)に登板後、日本へ向かって侍ジャパンに合流する予定が明らかになった。

まさにエースの風格が漂う初日だった。寒風が吹く中、入念なウオーミングアップとキャッチボールを終えた大谷がブルペン入りすると、ネビン監督ら首脳陣だけでなく、同地を訪れていたオーナーのアート・モレノ氏も視察に訪れた。データ分析機器「トラックマン」で1球ごとに数値を確認しながら、速球、スライダー、スプリット、カットボール、ツーシームを計37球。後半は、今季から導入される「ピッチクロック」対策として、投手から球種のサインを送る機器を使ってテストを繰り返した。

投球モーションには修正を加えた。プレートを踏む右足の位置をやや一塁側へ移動。さらにセットポジションの足幅を狭め、左足を半足分ずらすなど、マイナーチェンジした新スタイルで投げ込んだ。コンビを組んだ期待の若手オハピー捕手は「最高だった。過去数カ月、彼は何かを感じて異なる適応をしてきたんだろう」と分析。ピッチクロック対策については「彼のように球種の多い投手には簡単になるね」と、好感触を得たようだ。

この日は屋外での打撃練習は行わず、投球前後はクラブハウス内でトレーニング。今後の調整メニューは未定だが、大谷自身は1月下旬から同地入りし、WBCへ向けて投打ともに例年以上のハイペースで調整を続けてきた。覇権奪回を目指すWBCだけでなく、エ軍とは契約最終年となる公式戦でも、エースとしての責務は避けて通れない。残り約2週間。投打ともにキッチリと仕上げて、大谷が凱旋(がいせん)する。

◆WBCに出場した開幕投手 WBCに出場して大リーグの開幕戦で先発した日本人投手はまだいないが、プロ野球では過去6人いる。優勝した第1回の06年は上原(巨人)が経験しており、横浜相手に完投勝利を挙げた。連覇の09年はWBCメンバー4人が開幕を務め、3月23日(現地時間)の決勝戦で先発した岩隈(楽天)と抑えで登板のダルビッシュ(日本ハム)が4月3日の開幕戦で投げ合っている。

◆ピッチクロック 投球時間を制限するルール。投手がボールを受け取ってから、投手は走者なしの場面で15秒以内、走者がいる場面では20秒以内に投球しなくてはいけない。違反の場合は1ボールが宣告される。打者は制限時間の8秒前までに打席に入らなければならず、違反すると1ストライクが追加される。

○…エ軍大谷のWBCでの起用法について、ネビン監督はあらためて柔軟な姿勢を示した。昨季までの大谷は先発の中軸でもあり、今季も開幕投手の最有力候補。侍ジャパンでの役割について「わがチームでは先発だし(WBCでも)先発だろう」と話す一方で、短期決戦の難しさも知るだけに、各関係者との話し合いで調整プランを進めていく方針を示した。