エンゼルス大谷翔平投手(29)が、日本人で初の本塁打王を獲得した。今季は打撃のどこが優れていたのか、スタットキャストのデータ面から読み解いた。

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大谷が6月30日のダイヤモンドバックス戦(エンゼルスタジアム)で放った30号は、今季メジャー全体で最長飛距離の493フィート(約150・3メートル)だった。6年目で初めての1位。もちろん、米通算157本目で最長不倒にして、15年の計測開始後では同球場での最大アーチだった。今季平均本塁打飛距離は422フィート(約129メートル)で、15本以上打っている選手では最長だった。昨季の408フィート(約124メートル)から5メートル伸ばした。

飛距離が伸びた理由は、強く、速い打球が増えたからだ。平均の打球速度94・4マイル(約151・9キロ)はジャッジ(ヤンキース)、アクーニャ(ブレーブス)に次ぐ両リーグ3位で、初めて5位以内にランクイン。昨季の92・9マイル(約149・5キロ)、MVPを獲得した21年の93・6マイル(約150・6キロ)をも上回る。打球速度が95マイル(約152・9キロ)を超えるハードヒット率は54・2%で過去最高。昨年(49・8%)から4・4ポイントも上げた。

大谷は今季、バットを変えた。「打感は硬め。振りやすいように変化させた感じ」。WBC時の米テレビのインタビューでは、長さについて昨季より1インチ(2・54センチ)も長い34・5インチ(約87・6センチ)と答えている。強い球に振り負けず、速球系の長打率7割7分7厘は昨季の5割6分6厘から2割以上も上昇した。バットを長くすると遠心力で強く打つことができる一方で、普通の選手なら確実性が減少する。ところが、三振率は23・9%で過去最少。打率は初めて3割を超え、昨年リーグ18位だった出塁率は、4割1分2厘でリーグ最高となった。

昨季は2桁勝利&2桁本塁打を達成した。それでも変化を恐れぬ姿勢で、本塁打王を獲得した。【斎藤直樹】