日本ハム・ダルビッシュ有投手(25)が8日、ポスティングシステム(入札制度)で来季のメジャー移籍を目指すことを明らかにした。米球界では昨オフから動向が注目されてきたが、ついに決断し、自身の公式ブログで表明。短文投稿サイトのツイッターに寄せられた批判には誠実に応対した。球団は承認し、この日のうちに日本野球機構(NPB)に申請手続きを行った。06年にレッドソックスが西武松坂を獲得した際の総額1億1111万1111ドル(当時約130億円)を上回る、空前の大争奪戦がいよいよ幕を開ける。

 新たなステージを、選んだ。ダルビッシュが日本球界に別れを告げ、夢を追うことを決めた。公の場には姿を現さなかったが、この日午後3時に公式ブログを更新。「ファンの皆様へ~ご報告~」とのタイトルで、メジャー移籍を目指すことを初めて公表した。

 「このたび、ダルビッシュ有はポスティングシステムを利用する事を決めました。一番にファンの皆様へ伝えたかったのでここでの発表になりました」

 重い、苦渋の決断だった。日本ハムに04年のドラフト1位で入団。単独指名だった。故障歴や野球に取り組む姿勢などを疑問視した他球団は、抜群の潜在能力を持つ逸材だと認識していても、指名を見送った。1年目の05年キャンプでは、未成年での喫煙騒動も起こし謹慎処分を食らうなど、一時は問題行動も起こした。それでも球団、チーム一丸でサポートしてもらい、強い愛着を抱いていた。

 プロ入り7年目で、決断の冬を迎えた。2リーグ制後、初の5年連続防御率1点台の偉業を成し遂げるなど、数々の金字塔を打ち立てた。その土台が、日本ハム。それだけに「北海道日本ハムファイターズ球団には本当に感謝してます」とも、つづった。チームメートを含めた親しい周囲にもこの日まで一切、方向性を明かさずに結論を出した。葛藤の末の進路を、この日までに球団側へ伝えた。

 幼少時から日本球界に強く憧れ、飛び込んだ世界。そんな執着していた気持ちが少しずつ揺らぎ、いよいよ、かじを切った。入団時から米球界志向はないと断言してきたが、2大会連続世界一を達成した09年WBCなど国際舞台も経て、心は傾いていった。当時のキューバ代表で、同国の最高の選手と称されるグリエルを「すごい選手」と未知のレベルにも触れ、感化された。進化を続ける中で、自然なチャレンジだった。

 ブログ更新直後から、自身へのツイッターでの非難の嵐にも「時が経つにつれて自分の立場、周りの環境も変わります」と誠実に応対し、自分の夢への理解を求めた。来季で26歳。若さと才能を、米球団は高く評価。松坂超えの可能性もあるビッグマネーが動く、入札合戦がスタートする。落札球団が正当に判断すれば、金銭などの条件面、環境面で交渉決裂の恐れは極めて低い。日本のトップから、世界基準へ-。ダルビッシュが飛び立つ。【高山通史】