4年目の期待の右腕が、快投を演じた。日本ハム上沢直之投手(21)が、オリックス1回戦で今季初先発。初回に1安打で1点を失ったものの、尻上がりに調子を上げ、2回以降は完璧な投球を披露した。終わってみれば、相手打線をわずか2安打に抑え、今季初勝利をチーム完投一番乗りで飾った。昨季、8勝を挙げ飛躍したが、さらなる進化を証明し、今季初の3連勝に導いた。

 まだまだ投げ足りなさそうに、上沢はウイニングボールをこねながら、取材に対応した。大粒の汗が頬を伝うが、体は軽い。「力まないで投げました。とにかく力を入れないように。そんなに疲れも感じませんでした」。脱力の112球、2安打1失点。わずか2時間34分で、今季チーム初の完投勝利を完結させた。

 1回、先頭のヘルマンに中前打を浴びた。盗塁、犠打、犠飛であっという間の先制点。だが「1点取られて冷静というか、それで落ち着けた」。今季の自身初登板。知らず知らずに入っていた力が、自然と抜けていった。

 課題の直球もキレが抜群で、フォーク、チェンジアップ、スライダーを交ぜながら3~7回はすべて3者凡退。8回1死、T-岡田の打ち取った当たりが野手の間に落ちる不運はあったが、2回以降は三塁も踏ませなかった。栗山監督は「あっぱれだよね。相手打者をよく見極めて投げていた」。昨季4勝を挙げたオリックス。相性の良さは健在だった。

 キャンプ中の実戦からオープン戦序盤は苦しんだ。リリースポイントが安定せず、結果も伴わなかった。「監督やコーチも『うん?』って思っただろうし、自分自身もつらかった」。開幕を5日後に控えた3月22日。開幕7戦目となるこの日の登板を告げられた。チーム戦略上の措置だったが、目標としていた「先発6枚」に自分の名前はなかった。「開幕ローテ外れたのかなぁと思ったりもしました」。テレビ画面を通して伝わる、札幌ドームの熱気。開幕カードを戦うチームメートの姿を、ただ「あぁ始まったな」という気持ちで見つめていた。

 だが実際に仲間と顔を合わせると、気持ちは引き締まった。3月31日の千葉遠征から合流。最初のマウンドにかける思いは、日に日に強くなっていった。「ここで結果を残してシーズンにつなげよう」。開幕からフル回転していた救援陣を休ませ、1人で投げ抜いた。出番は7番目だったかもしれないが、ローテの中で一番太く、強い柱になった。「取り組んできたことが間違いじゃなかったことが証明できた。自分もうれしかったです」。不安も、悔しさも払拭(ふっしょく)した、すがすがしい笑顔が輝いていた。【本間翼】

 ▼プロ通算9勝目を挙げた上沢は、うち5勝がオリックス戦。23試合に登板した昨季は、先発22試合で8試合に先発したオリックス戦4勝3敗、54回2/3を投げて防御率2・63だった。プロ初完封は9月15日オリックス戦(5-0)。残る4勝はロッテ、ソフトバンク、楽天、中日1勝ずつ。