打つだけじゃない。阪神のドラフト3位ルーキー江越大賀外野手(22)が走攻守で存在感を発揮した。1回裏に3点目のホームインを防ぐバックホームでプロ初補殺。直後の攻撃でフェンス直撃二塁打を放つと、三塁走者として一塁ゴロで突っ込み、最後は神タッチで勝ち越しホームに触れる好走塁。すぐさま再逆転した2回4得点の象徴になった。

 三塁走者江越は迷わなかった。すぐ同点とした2回の1死二、三塁。鳥谷の打球が前進守備の一塁方向に高く弾む。ベンチの指示は「ゴロSTOP」。それでも「跳ねたからいけると思った」と腹をくくり、勝ち越しの1点を狙った。

 守備にも定評のある一塁ロペスは、迷うことなく本塁突入を防ぎにきた。ストライク送球でタイミングはアウト。だがその直前、江越は捕手嶺井のブロックを左方向にかわし、足から滑り込んでいた。最後は左手でサッと本塁に触れる。「セーフ!」。原球審の手が横に大きく広がった。アウトを怖がらない決断と完璧な走塁技術が、首位奪取の決勝点をもぎとった。

 「狙えるところを狙ったり、隙を突くことはやっているつもり。そこが今日はできて良かったです」

 球宴明けはパワフルな打撃で話題を独占した。そこに隠れるが、足にも絶対の自信を持っている。50メートルは5秒8。昨秋ドラフトで指名された81選手の中でも、最速タイの数字だ。母照江さんは陸上短距離の選手で、高校時代100メートルは長崎県3位。12秒9の快足を誇った遺伝子を受け継ぎ、江越も少年時代からリレーは大の得意だった。後方でバトンを受けると、次々に前の走者をまくり上げた。

 2軍生活では見えない武器で関係者を驚かせた。「数値には示しにくいですが、体幹が間違いなく強いです」と話すのは藤本2軍トレーナー。「カイザー」という機械を用いて、ひねりや上下動などを行う測定。江越は他の選手よりも重い負荷で力を発揮する。体の軸がぶれないため、スピードを落とさずに他の動きに移ることができる。和田監督も「江越の走塁が大きかった。スライディングもスピードがあって、本当にいいスライディングだったね」と大絶賛だ。

 直前の1回2死二塁では宮崎の中前打を処理し「ランナーの足が速くなかったので、コースだけしっかり投げました」と本塁へダイレクト送球。強肩で二塁走者ロペスを刺し、3点目を守った。記念すべきプロ初補殺。この夜は2回の逆転劇を導くフェンス直撃二塁打より、足と肩が光った。3連戦前、駒大の先輩・中畑監督から「空気を読んでゲッツーを打てよ」と“口撃”された。敵将もびっくりな“裏切り”が白星を運んだ。【松本航】