プロ野球記者8年目を迎えるが、1つのプレーを深く掘り起こす機会は、意外にも少なかった。「ファインプレー」に接することはあっても、生の言葉や一瞬の動きに目を奪われがちだったと自戒する。15年シーズンも佳境に入りつつある中、今回はシーズン前半戦で印象に残った「プロの技」に着目した。

 私が取材したのは、巨人片岡治大内野手(32)と坂本勇人内野手(26)のコンビプレーだった。場面は5月14日の広島戦(東京ドーム)の8回1死。広島松山が二遊間に放ったゴロを二塁手の片岡が回り込んで捕球し、一瞬の判断で遊撃手の坂本にグラブトス。坂本は素早く一塁に送球し、間一髪のタイミングでアウトを取った。

 かつて、中日の荒木、井端(現巨人)が得意としたプレー。片岡、坂本の「カタサカ」結成か、なんて勝手に思ったが、連係プレーに至るまでの過程は興味深いものだった。「複雑なプレーじゃないです」と2人は振り返ったが、二塁手の片岡がグラブトスを選択する条件、グラブトスを成功させるカギなど、事細かに書き込んだ。

 片岡への取材が終わる直前だった。「実はね…」と一瞬言葉を濁し、笑顔で続けた。「アウトになったから良かったですが、あのケースは自分で投げるという選択肢もありだったな、と思うんです」と明かした。なぜ、そう思ったのか。その答えを2人の生の声が明らかにする。【久保賢吾】