偶然の産物から“魔球”が誕生した。料理をしていて「砂糖と塩を間違えたら、おいしいものができた」という偶然があるように、野球でも同じことが起こる。

 その現象が起きたのが巨人ルーキー高木勇人投手(26)だ。思いがけないヒントをきっかけに人生が変わった。開幕から先発ローテーションを守り続けている。開幕5連勝の原動力となったのが、130キロ後半でスライダーほどは曲がらないが、カットボールより曲がる「高木ボール」だ。投球の軸として投げ込み、各チームの打者から三振を奪ってきた。

 高木ボールは、ある球種を練習している時、偶然から完成された。逆転の発想からヒントを得てつかんだ。「こうやって投げるとかじゃなくて、自分の感覚だからね。人それぞれ投げ方があっていいと思う。自分にあった投げ方で覚えればいいと思う。1つのきっかけが、まさかの一言だった」と社会人時代を振り返った。

 1つの球種を覚えたことで、25歳にしてようやくプロ野球界に飛び込むことができた。偶然の産物。そう彼は話すが、取材をすればするほど、その裏に地道な努力があったことが分かる。高木ボールでの三振を、もっともっと見たくなった。【細江純平】