雨にも負けず、スライドにも負けず。西武のルーキー高橋光成投手(18)が5回2失点で4勝目を挙げた。パ・リーグで高卒新人投手の月間4勝は99年7月と9月、西武松坂(現ソフトバンク)が記録して以来。さらに8月の4勝はリーグただ1人で、月間MVPも有力だ。受賞すれば、これも99年7月の松坂以来となる。記録的な快投で、CS争いのチームを3位に浮上させた。

 高橋光が、新人らしからぬマウンドさばきを見せたのは3回だった。先頭聖沢に死球を与え、続く西田の遊ゴロを外崎が二塁へ悪送球し無死二、三塁のピンチを背負った。「足場が悪いので球速より打たせて取ろうと思った」と、島内は直球で浅い中飛に仕留めたが、北川とペーニャは低めのフォークで抑え無失点で切り抜けた。味方のエラーもカバーする堂々たる投球だった。

 能力がケタ外れだ。渡辺SDは昨年のドラフト候補の中で違いを見抜いていた。「150キロを2、3球投げて後は抜いている人は投げるスタミナがない。光成はすべて一生懸命投げていた。他の候補と、そこが違った」と。投げる度に成長する理由もそこにある。だから新人王資格の30イニング未満に止めて来季勝負という考えもない。「そんなことしたら伸びないよ」。今季は2軍でじっくり育成する方針だったが、チーム事情だけでなく、今年デビューするべき力があったということだ。

 前日8月30日の楽天戦が雨で流れ、初めてのスライド登板だった。横田投手コーチから心構えをアドバイスされた。「ずっと緊張していたら持たない。1度切っていいと言われたけど切り過ぎちゃってガッと入れなかった」と初々しく笑った。加えて試合前から小雨模様で、試合中には強くなりマウンドに土を入れて整備し3分の中断もあった。

 あらゆる試練をことごとく乗り越えて見せた。「足場は気になったけど、どうしようもない。とにかくストライク先行を心掛けました」と、悪条件を克服した。テンポがいいから高橋光の時には大量点が入る。ここ4試合は9、6、7、そして今季最多15点だ。投げっぷりがいいからチームに勢いを呼ぶ。18歳の右腕がCS争いに欠かせない存在になった。【矢後洋一】

 ▼高橋光が4連勝。高卒新人の月間4勝以上は13年8月藤浪(阪神)以来となり、パ・リーグでは99年7、9月松坂(西武)以来、16年ぶり。ドラフト制後(66年以降入団)は7人、10度目だが、高橋光は8月2日ソフトバンク戦が初登板。いきなりデビューした月に4勝以上の高卒新人は62年4月尾崎(東映=5勝)以来で、ドラフト制後は初めてだ。また、今年の8月に4勝は若松(中日)と高橋光だけ。リーグで月間4勝が高卒ルーキー1人だけのケースは99年7月松坂以来になる。