「天敵シフト」や!! 阪神は1日広島戦が1回途中、降雨ノーゲームになった。打席には立たなかったが、今季、苦戦するジョンソンに対して初めて左打者の今成亮太内野手(27)を抜てき。守備力を重視した上で、ジョンソンの球種を減らす対策の思惑もあった。富山での巨人-ヤクルトも雨で流れ、1ゲーム差のまま。これまで見せなかった勝負手を繰り出し、頂点を狙う。

 豪雨でかすむ甲子園のバックスクリーンに和田阪神の強い意志が込められていた。「7番三塁今成」。これまで、まったく歯が立たなかった左腕ジョンソンに仕向けた刺客は意外にも左打ちの今成だった。水入りがなければ初対決だった。

 和田豊監督(53)は抜てき理由を「チーム状況もある。甲子園で、しっかり守るということや」と話す。大勝負の9月を守り勝つ姿勢だろう。8月30日ヤクルト戦は4回、三塁今成の失策が引き金になって大量7失点。中堅伊藤隼が右中間への大飛球を捕れず、逆転3点打を許した経緯もあった。守備にほころびが出て2位ヤクルトと3位巨人に1ゲーム差に迫られている。より手堅く守る-。ある球団関係者は「能見が先発の時は右打者のゴロが増える。守備をしっかりしないといけない」と説明。通常なら右打ちの新井が三塁に起用されるが、守備に優れた今成で守りを固めた。

 実は、もっと深い意図で左打ちの今成を起用していた。相手は今季4度の対戦で2敗、25イニング無得点中で防御率0・67と抑えられている天敵だ。別の球団関係者は「ジョンソンに対して、誰も打っていない。右打者でも左打者でもあまり変わらない」と話す。打者の左右で用いる球種の違いにも注目する。右打者には直球、カーブ、カットボール、シュート、チェンジアップの5球種を駆使し、胸元を突いてのけぞらせる。だが、左打者には4つの球種しか用いない。チェンジアップをほとんど投げない。「1つでも球種が減るメリットは大きい」と球団関係者。左打者は狙い球を絞りやすくなる利点もあった。

 打席に立つことはなかったが、この日の大胆オーダーには白星を奪いにいく執念が見えた。開幕から和田監督は右腕に左打者を当て、左腕に右打者を起用するオーソドックスな用兵を貫いてきた。苦手サウスポーに左打者をぶつける、常識破りの「天敵シフト」が鮮やかに映る。ジョンソンだけでなく、巨人マイコラス、ポレダ、ヤクルト館山も苦手だ。シーズン佳境、そして、クライマックスシリーズも控え、勝負どころの和田監督は動いて攻める。【酒井俊作】