眠れる主砲が、ライバル韓国との準決勝に戻ってくる。侍ジャパン中村剛也内野手(32)は、今日19日の韓国戦で「4番・DH」として先発復帰が濃厚となった。16日の準々決勝プエルトリコ戦は右太もも前の張りで欠場も、18日は台湾・台北から羽田空港着の航空機で帰国し、東京ドームで打撃練習を再開。プレミア12は19打数3安打、打点0、打率1割5分8厘、ノーアーチだが、日本が誇るホームラン打者「おかわり君」が、このまま終わるはずはない。

 世界一奪取への最強ピースがそろう。宿敵・韓国との大一番。手負いの中村剛が定位置4番に戻ってくる。「台湾では何もできなかった。特に気にしてはいませんが、このまま終わるつもりもない。結果はどうなるか分からないけど、それ以上もそれ以下もない」。台湾での4戦は14打数1安打で不振を極めた。言葉には出さなくても心中が穏やかではないことは明らかだった。胸の奥底には「4番」として人一倍の闘志がある。静かな口調ながら強行出場を志願するのは自然の流れだった。

 自身初の国際大会は代名詞の本塁打が鳴りを潜めている。それどころか長打すら1本もない。「いつも通りですよ」。喜怒哀楽は表には出さず、チーム最年長として堂々とした態度を一貫してきた。結果が出ていなくても、その姿は後ろを打つ若侍への相乗効果をもたらしている。準々決勝で代役4番を務め、通常は5番に座る筒香は打率4割5分をマーク。6番中田も打率4割3分5厘で打点13を稼ぐなど、神懸かり的な活躍を見せている。4番中村剛が与える重厚感と安心感が若き侍打線の力を最大限に引き出していると言っても過言ではない。

 足が震える思いで代役4番に入った筒香は「中村さんは何もかもが違う。あのオーラと存在感はすごい」と証言。大阪桐蔭の後輩で「おかわりさん」と呼んで慕う中田にとっても、重圧のかかる場面で結果を出し続けている背景には中村剛の存在がある。中村剛は「僕の力じゃない。あいつらの力。頼もしいですよね」と謙遜するが、侍ジャパンの4番は、おかわり君だというのが小久保監督を含めチーム全体の共通認識として戦ってきた。

 接戦、劇的勝利でベスト4まで勝ち上がってきた。記憶から忘れ去られようとしているが、開幕韓国戦でチーム初安打を放ったのは中村剛だった。台湾入り後は「こう見えて意外と神経質なので海外は苦手なんですよね。早く日本に帰りたい。やっぱり日本が一番いいですよ」と不慣れな環境が主砲の感覚を鈍らせていたのかも知れない。世界一まで残り2戦。この日は待望の帰国後に東京ドームで、さっそくフリー打撃を再開させた。もう、心配はない。母国・日本でおかわり君が気兼ねなく暴れる。