阪神金本知憲監督(47)が、若き大砲の超変革へ熱血指導だ。12日、陽川尚将内野手(24)に今キャンプ最長となる90分の徹底指導。全体練習最後の特打では、他の選手に目もくれず、和製大砲に付きっきり。才能の目覚めをうながそうと熱弁を振るった。指揮官からの熱い視線と熱い指導は期待の表れだ。

 陽川が動けば、金本監督も動いた。陽川が打てば、金本監督は視線を止めた。1時間15分、打撃を徹底的に解剖するように、あらゆる方向から見入った。言葉や身ぶり手ぶり。ときには自らバットを握り手本を見せた。真っすぐ見つめる大砲に、指導は熱を帯びた。

 金本監督 昨年の秋から言い過ぎかというくらい言っているが、あえてやってる。パッと1つ言えば身につくと思うが、先のことを見て。いろんなことにとらわれず、全体を見て直していく方がいい。

 課題は多い。伝えたいこと、修正点は1つや2つではない。だが、それ以上に魅力がある。陽川が最初に入った三塁側のケージでの打撃中には、10度止めて声をかけた。真ん中、一塁側とケージを動いても、指揮官は背番号55をロックオン。主に下半身の使い方について助言。最後のロングティーでは、自らトス役を買って出た。一転して下半身を使わずに、バットをインパクトまで出す動きを反復させた。ヘッドを利かせてボールを運ぶ感覚を教え込もうと。2人だけの空間は、他の選手が特打を終え、球拾いが始まっても、10分以上続いた。

 フリー打撃中にも15分間指導した。計90分間を陽川に費やした。8日の北條の30分を大きく上回るマンツーマン最長指導。前日11日、岡崎について指揮官は「競争に入っていけると思うからやっぱり俺も指導する。開幕したらベンチに入っていないと思っている選手なら、俺はあそこまで言わない」と話していた。だからこそ、この日の徹底指導の陽川への期待値が分かる。もちろん、陽川も「いろいろ聞いて吸収していきたい」と意気に感じている。

 指揮官が求めた肉体強化にも成功。6キロ増で体重91キロも、タイム走の記録は伸びた。金本監督は「トレーニングをしてきた成果」と目を細める。競争激しい内野だけでなく、出場機会の幅を広げるため外野にも挑戦する。この日シートノック中に中村外野守備走塁コーチから外野を守るように指示された。直後の内外野別ノックでは外野へ。中学以来で、グラブは中村コーチのものを使用した。

 「これから実戦に入っていく。外野も守れればチャンスも増えてくるので挑戦したい」(陽川)。チームのためではなく、自分のために、目の前にあるチャンスを必死でつかもうとしている。【前原淳】

<陽川尚将(ようかわ・なおまさ)アラカルト>

 ◆生まれ 1991年(平3)7月17日、大阪府生まれ。

 ◆阪神ファン 幼いころから猛虎党。応援していた選手は今岡誠(現阪神2軍打撃兼野手総合コーチ)。

 ◆球歴 金光大阪では1年夏、3年春に甲子園出場。3年夏は大阪大会準々決勝で敗退。高校通算36本塁打。同年巨人から育成ドラフトで3位指名を受けたが、入団を辞退し東農大へ進学。東都2部リーグ通算109安打。13年ドラフト3位で阪神入団。

 ◆プロ入り後 ウエスタンでは、1年目の14年は98試合に出場し75安打、38打点、打率2割4分1厘。昨季15年は54試合、40安打、16打点、2割1分3厘。1軍戦の出場はなし。

 ◆苦闘 入団1年目のキャンプを控えた14年1月、内科的疾患で入院。2年目の昨春は1軍キャンプ入りも、練習試合で左肩を亜脱臼し、実戦復帰は6月にずれ込んだ。

 ◆期待 金本新監督の昨年10月19日の就任会見で、「振れる選手」と名指しされる。同28日の甲子園での練習では、付きっきりで腰の回転の指導を受けた。

 ◆サイズ・投打 180センチ、91キロ。右投げ右打ち。