日本一3連覇を目指すソフトバンクは2年連続の開幕戦黒星を喫した。敵地での楽天戦で2回までに3点を先行したが、5年連続開幕投手の摂津正(33)がプロワーストの1イニング4四球を与えるなど3回6失点でKO。工藤公康監督(52)も首をかしげる大黒柱の乱調で、敗戦に悔しさをあらわにした。

 敵地の悪条件が実績のある右腕を狂わせた。試合開始の時点で気温10度を切り、日が沈むほどに寒さは厳しくなった。3点リードで迎えた2回裏に、まさかの光景が広がった。

 開幕投手摂津の制球が定まらない。先頭のウィーラーを四球で歩かせ、今江には甘い球を痛打された。「3点取って、何もできなかった。申し訳ない」。コントロールが持ち味のはずが、プロ初の1イニング4四球。一気に5点を失い、逆転を許した。3回にも嶋に適時二塁打を浴び、6失点KOとなった。

 開幕候補には若手の武田も挙がっていた。それでも工藤監督は摂津を指名。実績と経験が最大の理由。開幕投手ともなれば、相手エースとの対決になる。次回登板では日本ハム大谷が予想される。摂津ならば、重圧のかかるマウンドで力を発揮してくれる。そんな思惑があった。しかし、結果は背信投球。「開幕投手は先頭に立って、勝てば、チームの雰囲気が良くなる。もうひと踏ん張りしてほしかったが、今日は甘く高くいき過ぎてしまった」。指揮官は粘りのない投球に、物足りなさを感じた。

 常勝軍団を築くためには、何が必要か。工藤監督は持論を語ったことがある。「なぜ勝ち続けるのが難しいか。それは世代交代がうまくいかないことにある。主力選手に頼り続けては、長く勝ち続けることはできない」。主力に若手をミックスしながら、チームを変えていく。その思いが込めたのが、斐紹の開幕初マスクだった。「勉強になったところはあったと思う。消極性につながるより、もっと自分で学んでリードできるように、そういうキャッチャーになってほしい」。バッテリーにとってはつらい1日になったが、この敗戦は無駄にはならない。

 「試合だから勝ち負けは出てくる。明日につなげてもらうように。負けると悔しい。明日、ぶつけてほしい」と工藤監督はナインの奮起に期待した。就任1年目の昨年も開幕黒星。さらにカード負け越しで始まったが、90勝の独走Vだった。3年連続日本一を目指すチームにとっては、たかが開幕戦の1敗である。【田口真一郎】