転んでもただで起きない。阪神は、ルーキー左腕今永を打ちあぐねてDeNAに惜敗。打線改造も実らず5安打に終わったが、明日につながる貴重な1本があった。9回、不振に苦しんできた鳥谷敬内野手(34)が23打席ぶりの安打で通算300二塁打を達成。阪神在籍では史上3人目の偉業から、キーマンの浮上に期待しましょう。

 ただの1本ではない。鳥谷にとって、いや猛虎全体にとっても待望のHランプだ。2点を追う9回2死走者なし。DeNA守護神山崎康の低めスライダーをミートした。痛烈なゴロで一塁線を抜く。通算300二塁打は実に23打席ぶりの安打だった。

 「いろいろ自分の中で考えてやっているので…」

 試合前時点で4戦連続ノーヒット。練習中、ルーティンに変化をつけた。三塁側ベンチ前で行われていた全体アップの途中、ルーキー高山、21歳北條と3人で列から離れて室内練習場へ。志願する形で約30分間の特打を終えてから、通常のフリー打撃4分間に入った。

 34歳のベテランが若手とともに特打を敢行。復調に懸ける覚悟の表れに他ならない。「昨日に比べて、インパクトでの力強さが戻っている。ああいう選手は練習していく中で取り戻すモノがある」。浜中打撃コーチが予感した通り、ようやく長いトンネルを抜けた。

 前日13日DeNA戦では二盗を試みられた際、捕手からの二塁送球をアウトのタイミングで落球。金本監督から「鳥谷クラスの選手がやるプレーじゃない」と苦言を呈された。この日も遊撃への当たり損ねにチャージした際、ボールをファンブルする場面も(記録は内野安打)。まだ名手らしからぬプレーも目立つだけに、9回の1本を再浮上のタイミングに変えたいところだ。

 「あの1本じゃあ、まだトリも吹っ切れないでしょう。きっかけにしてほしい」

 指揮官も一気の変わり身に期待する。阪神在籍期間内での通算300二塁打は球団史上3人目。レジェンドの奮起なくして、猛虎のV奪回はあり得ない。

 連続ノーヒットは19打数で止め、自己ワーストの20打数到達は防いだ。

 「自分の中で1本打てたのは良かったと思いますけど、チームが負けてしまったので…。また明日、勝てるように頑張ります」

 キャプテンには責務がある。チームを勝利に、優勝に導くためにオフから体をいじめ抜いてきた。今度こそ、素早く完全復活を遂げたい。【佐井陽介】

 ▼通算300二塁打=鳥谷(阪神) 14日のDeNA10回戦(横浜)の9回、山崎康から右二塁打を放って達成。プロ野球66人目。初二塁打は04年4月14日の広島2回戦(甲子園)で沢崎から。

 ▼鳥谷は6日ヤクルト戦第2打席から14日DeNA戦第3打席まで19打数連続無安打。自己ワーストは14年9月10日巨人戦第2打席から同15日ヤクルト戦第2打席まで20打数連続で、あと1に迫っていた。

 ▼鳥谷の連続打席無安打ワーストは25打席で今季3月27日中日戦第1打席から4月2日DeNA戦第2打席まで。このときの打数は18だった。