またまた初ものだ! 楽天のドラフト1位ルーキー、オコエ瑠偉外野手(18)が「日本生命セ・パ交流戦」で、右に左にプロ初の3安打を放ち、猛打賞を獲得した。高卒新人では99年の広島東出、西武赤田以来17年ぶりという記録だ。若武者の勢いが8回代打後藤の同点打、聖沢の勝ち越し打を呼び逆転勝ち。交流戦は再び貯金を1とした。

 冗談が本当になった。試合前、オコエは監督から「3本打て」とハッパを掛けられていた。「今日、散髪にいきますって言ったら、じゃあ3本打てって」。そう言うと、おかしそうに笑った。今は何でも可能にしてしまう力がある。開幕からは11試合7打数無安打で2軍落ちしたが、昇格した5月29日からは11試合で37打数10安打の2割7分だ。

 3回の1打席目は無死一塁から外角直球を右前に打ち返しチャンスを広げた。5回の2打席目は1死から真ん中カーブを左前へ。そして3打席目の7回は2死からスライダーを左中間へライナーではじき返す二塁打と打ちまくった。この中で2打席目に成長があった。

 前日、黒田にやられた反省を生かした。いつもは真っすぐ待ちだが、この時だけは初球カーブを読み切っていた。「昨日は昨日だけど、今日に生きた。黒田さんにはスライダーでやられた。1打席目はストレートを打ったから、捕手は変化球が弱いのかなと思っていると考えました」。気持ちを切り替えられるから、違う投手にも対応できる。

 底知れない能力の持ち主だ。礒部打撃コーチは「開幕直後より振れるようになった」と成長を認める。ただし10ある能力のうちまだ1しか出していないと言う。「1年じゃ無理。全部出るのは3年後か5年後か。まだまだ行けるよ」とさらりと言った。全開したら、いったいどれほどの選手になるのか?

 梨田監督は「スケールの大きな選手になってほしい」と大きな期待を寄せる。その半面でクギも差す。1打席目は送りバントのサインを出したがファウルになるのを見てヒッティングに切り替えた。これが猛打賞につながるのだが「セーフティーなのか送りバントなのか」と苦言を呈した。

 オコエにとっては毎日が勉強だ。「課題はいっぱいある。9番の仕事は果たせたけど、勝利に貢献するヒットを打ちたい」。慢心はせず、貪欲に進んでいく。【矢後洋一】

 ▼オコエがプロ入り初の3安打。高卒新人の猛打賞は99年に東出(広島)と赤田(西武)が記録して以来、17年ぶりだ。13年大谷(日本ハム)は2安打を13度記録したものの、3安打以上は1度もない。東出の初猛打賞は7月10日巨人戦で、赤田は9月28日ロッテ戦。6月までに猛打賞を記録した高卒新人は5月30日巨人戦で3安打した89年谷繁(大洋)以来、27年ぶり。8月31日横浜戦で初めて3安打した93年松井(巨人)より早く、オコエが猛打賞をマークした。