ベテランの、苦労人の、そして生え抜きの意地を見せた。阪神狩野が敗戦の中、キラリと光る3安打猛打賞。14年8月29日ヤクルト戦以来、約2年ぶりの固め打ちで奮闘だ。

 「そうですね。追い上げているときだったんでね。でも、なんと言っていいのか…。やっぱり勝ちたいですよね。自分が試合に出たときは仕事ができるようにと思っている。これを続けていきたいです」

 左腕ジョンソン相手とあって今季8度目、「3番打者」としては2度目のスタメン出場を果たすと、1回、江越、鳥谷が連続三振に倒れた後に中前打。落ち込みそうなチームのムードを懸命に引っ張った。

 見せ場は5点を追う5回だ。1点を返し、なおも1死三塁のチャンス。2-2の平行カウントから7球目148キロストレートを右前へはじき返す適時打だ。さらに7回にも2番手今村からフォークを拾う技ありの右前打。猛打賞としたが勝利には届かなかった。

 16年目を迎えるまでにはいろいろあった。09年に活躍、捕手の定位置を奪いかけたときにメジャーから城島が加入。その後は腰痛も発症し、不運の苦労人なのは誰もが知るところだ。それでも決して腐ることがないのが人柄だ。

 今年2月のキャンプは2軍の安芸で通したが常に実戦を意識しての練習を自分に課してきた。「いつでもやれるように」。敗戦の列の中、狩野はしっかり前を向いてバスに乗り込んだ。【編集委員・高原寿夫】