広島ドラフト2位指名の花咲徳栄・高橋昂也投手(18)が10日、さいたま市内で契約金6000万円、年俸600万円で球団と仮契約を結んだ。最速152キロ左腕は「開幕1軍」を目標に設定。父敏樹さん(53=会社員)は、人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する変身キャラにたとえ、息子の飛躍を期待した。(金額は推定)

 どれほど緊張していても、目標は見失わない。忘れない。担当の尾形スカウトの手で真っ赤なカープの帽子をかぶった高橋昂は、同じ言葉を何度も繰り返した。「1日も早くチームの力になりたい。開幕1軍を果たせればベストはベスト。早くチームに貢献できるように頑張りたい」。西武今井、ヤクルト寺島、楽天藤平らとともに「高校BIG4」と呼ばれた左腕のプライドだ。

 仮契約に同席した敏樹さんが、父ならではの目で高橋昂の人となりを言い表した。「普段は普通の子です。面白くもなんともない…。でも『こち亀』の本田みたいに、マウンドに上がれば人が変わるんです」と、激変キャラだと暴露した。

 本田とは、人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する本田速人。普段は頼りない人格が、バイクに乗ると顔も言動も変わり、攻めキャラに変身する。高橋昂も同じ。普段はおとなしい。口数も少なく、大きなことは言わない。ただマウントに上がれば、今年の高校球界をリードした4本柱の1人、超高校級の左腕になる。

 中でも真価を発揮するのは、得点圏に走者を背負ったときだ。今夏甲子園大会1回戦・大曲工戦、2回戦・樟南戦と得点圏の被打率はゼロだった。「絶対に点はやらない気持ちで、狙って三振を取りに行きます」と目の色を変える。最速152キロの速球にフォーク、縦横のスライダー、カーブなど多彩な持ち球に加え、気持ちのギアも上げられる。尾形スカウトも「左投手でフォークの決め球を持っているし、球持ちが長い」と絶対の長所に期待する。

 「ピンチで粘る。それはプロでも自分の特長にしていきたい」と高橋昂。苦境にも動じず、攻めに転じる「こちらカープの本田速人」になってみせる。【堀まどか】

 ◆本田速人 秋本治原作の人気漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」に登場する警察官。普段は妹の影響もあり、料理、スイーツ、少女漫画などが大好きなおとなしい女性的なキャラクターだが、バイクに乗ると性格は一変。男らしく、ときには凶暴な性格になる。