ロッテの隼が新幹線「はやぶさ」に負けないスピードでプロの水に慣れる。佐々木千隼投手(22=桜美林大)が12日、ロッテ浦和球場で行われた新人合同自主トレで本格練習。同グラウンドで初めて汗を流し、すぐ横を走る新幹線を目の当たりにしながら、約5時間のトレーニングを行った。ソフトバンクの編成担当が訪れ、練習後はサインを求めるファンが殺到するなど、注目度は高まる一方だ。

 日本最速の営業運転320キロを誇る「はやぶさ」は、ロッテ浦和球場から細い道路1本を隔てた場所を通る。ライトグリーンの車体を目の当たりにした佐々木は「あれがはやぶさなんですか。知らなかった。走ってるなと」。岩手県に住む父方の祖父母に会うため東北新幹線に乗車した経験があるが、思わぬ形での再会となった。

 佐々木の最高球速は153キロ。高校時代は143キロで、大学で10キロ増を達成した。プロでは320キロの半分となる160キロを目指すかと問われると「無理っすね。速ければそれで魅力あるけど、変化球で打ち取ったり、コントロールに磨きをかけたい。スピードよりそっち」と別の魅力で勝負すると誓った。シンカー、スライダーなど切れのある変化球を持つだけに「1つ1つの精度を上げたい」と、事故なく精密なダイヤにのっとる新幹線のように丁寧な投球を目指す。

 球界のハヤブサに、酉(とり)年の注目は高まる一方だ。ソフトバンク山村善則プロスカウトが視察に訪れ、練習後には100人以上のファンがサインを求めて殺到。6分間で約50人に対応する臨時サイン会となった。スタンドも開放されたため、初めてファンの前での練習となったが「あまり気にせず、いつも通りできた。意外と動けている。プロの世界のやり方に早く慣れたい。全体的にまだパワーが足りないので(ウエートトレーニングを)1つ1つ大事にやっている」。食事面など人生初の寮生活にも慣れ始めているだけに、残る課題はトレーニング方法の確立だ。

 この日の投球はキャッチボールだけで、ブルペン入りの時期は未定。「大体の入りたい時期はあるけど、まだいつとは言えない」。焦らず、じっくりとキャンプに向けて仕上げていく。【斎藤直樹】

<球界と新幹線>

 ◆レアもの 15年4月、DeNA中畑監督は「ドクターイエロー」の愛称を持つ923形検測車両に新横浜駅で遭遇。「幸運を呼ぶ」という都市伝説に、記念撮影。

 ◆名前 九州新幹線はスワローズの「つばめ」。広島会沢翼、西武国場翼は山形新幹線と同じ「つばさ」。佐々木と同じく隼(はやぶさ)が入るのは、阪神伊藤隼太、広島庄司隼人、ソフトバンク寺原隼人ら。巨人桜井は新大阪と鹿児島中央を結ぶ「さくら」が入る。

 ◆球場付近 マツダスタジアムは左翼後方に山陽新幹線、ナゴヤ球場は東海道新幹線が走る。

 ◆不通で中止 74年9月13日、新幹線不通で移動できずパ・リーグ3カードが中止。90年8月10日、台風のため不通で巨人-中日(東京ドーム)が中止。

 ◆乗り鉄 巨人、日本ハムで活躍した木佐貫は04年3月、九州新幹線の部分開通のイベントに参加し、故郷の川内駅で一日駅長を務めた。乗り鉄で知られ、着用した帽子、制服、タスキを大事に保管。